【 AIRAM 〜アイ・ラム〜 】(第一部小説執筆中)

オリジナル小説【AIRAM】。「アルファポリス」で執筆中公開中のものをこちらでも。追加入力&修正中ですがよろしければアルファポリスでもお気に入り等よろしくお願いします。

第一部「密室2日目」(対象…14歳のマリア名の少女、残り21名)〜『再スタート』

再スタート。

 

 

 

「やあRANちゃんばっかり観たいけど仕事だもんなあ。あっRAMの方で追加項目追加~」

『俺仕事の件以外RANちゃんしか見てないあと外の景色』

「仕事してていいッスよ4番目の先輩、つかアンタちゃんと寝てます?」

『仕事今大詰めだからこのプロジェクト終わったらちゃんと寝るそれまではRANちゃん見守る大丈夫RANちゃん寝てる時に寝たから寝顔は後で録画で観るから』

「怖えマジ怖え、はい追加項目入れます、」

「あーまあ4番目は俺とは違うファンだからなあ」

「何か違いあるんスかファンの中で」

「あれなのよ4番目と12番目は肌の露出あっても見れる方のファンなのよ俺達は尊過ぎて見れない方のファンなのよダメなのよ穢らわしい行為するファンにはなれない方なのよ~」

「あーなるほどッスね~」

『うん8番目はいいよそのままで俺と12番目だけの領域だから年齢近めの俺と一番年齢近い12番目だけの領域だからでも12番目は割とライトな方だから俺重度な方ヘビーな方でも潔癖だから大丈夫RANちゃんマジスタイル女神』

「マジ穢らわしいマジお前近付くなよつか先輩に対して敬語使え」

『え~同じ歳じゃん』

「…先輩何してるんスか」

「俺側のファンメンバーに特別映像作ってるとこ。あっやらしいのダメって一個上の先輩にボツくらった、」

「業務中ッスよ。つかそれって4番目の先輩と同じ枠じゃないッスか?」

『「ぜってえ違う」』

「仲良いッスね」

 

 

 

「なあコレあれだよな飛行機とかの緊急時用のやつじゃね?」

「ウィルソンそれな~」

「てかこれいつまで続く、あっ終わった。到着~」

「てかこれ地下二階くらい下に来てない?」

「振り出しに戻るの? もう外出してくれていいじゃんコレ入る前の人数もう13だったよ」

「つか13とかマジ不吉過ぎて怖過ぎ」

「あれじゃんユダがいるやつじゃん」

「誰よユダ」

「私?」

「お前はした金で私らの事売るのかよ」

「否定はしないね! 何せこんな状況だし」

「むしろそう言われると安心するねえ」

「だよなあ。売らないって言われる方が逆に疑うわ」

「ホンそれ」

「えってかこのガラス窓何えってか向こうにあいつらいない?」

「あーピンクの部屋の人達じゃん!」

「ねえガルシア見てない?」

「スミスちゃん私ミラーいますよ」

「わかってるわ。ブライアンとルイスはいるんだけどガルシアがいないのよ」

青い部屋の人はいんじゃん、あーでも四人か、」

「あれじゃね悲鳴の時に誰か死んだんじゃね」

「あー毒とか毒とか毒とかでね」

「マジ避けてて良かったやつ」

「てか本当にガルシアいねえなどうする?」

「どこにいんの」

「そういやガルシアちゃん一番端の使ってたよね」

「そうなん?」

「あれハズレだったんじゃね」

「マジか怖えな」

「ご飯とかで少し肩の力抜いてたせいかそういうのあるって考えもしなかったね」

「それ」

「どうしようてか先進めないじゃん」

「ねえ、ウィルソンとかブライアンとかのグループの人、」

「何だよ赤髪」

「マリア・エバンス。赤髪だからってバカにすんなよ、ウィルソン」

「はいはい、んで何なのエバンス」

「ガルシアとかいう巻き髪にしてた女、あのピンクの部屋のグループの中にいるよ」

「は?」

「えー、寝返ったとか?」「さあ、でもピンクの部屋の床抜けてたんでしょ?」

「…何かガルシアのいる所だけ床違うね」

「あ、ホントだ」

「さっすがブライアンちゃん」

「ピンクのグループの方にベッドとかあるからやっぱり上からあそこに直送されたのかしら」

「産地直送便かあ。生きは良いかもしんねえけど美味しくなさそうだな」

「つか一人死んでるねあれ」「やっぱり? 何か泡吹いてるよね」「何か首絞められたっぽくない? ほら、ドライヤーのコードで」「あー道理で今朝一個無いと思った」

「パネルの数字が20になっているな」

「そうだね。こっちが今12人で、あの部屋の人達が今ガルシア入れて5人、残りの3人は通路か食堂に残ったのかな」

「だろうな。その3人を除いても、人を分けてどうするつもりだろうな。私達の方は銃も無いし此方側の部屋には何も無い。あるとすればあっちのメンバーだけで殺し合いさせる気か」

「プロジェクト側が急ぎたいならその可能性が高いよね」

「プロジェクト側、ね。何故そう思うんだ」

「こんなにお金注ぎ込んでるし、リフォームしてるにしては建物の構造が古くない。元がコンサートホールとかだった可能性を除いては新築だと思う。殺し合いさせる以外で予め決めてた目的があって計画されてないと、針山の部屋の通路や他の室内構造は有り得ない」

「…それこそ誰かを探す為だけにか?」

「いや、人探しだけならこのブレスレットは必要無いと思う。仮に人探しの可能性が確定していたとしても、目的の主流は人探しじゃなくてこのブレスレットとかだと思う。私はブレスレットの実験と毒物の実験かなあとは思うけど、」

「そんなSFみたいな、…もしブライアンの言っている事が全部合ってるとしても、私は人探しが一番の目的だと思うよ」

「…、ブレスレットだと思う。プロジェクトにお金を出す人が人探しをついでにさせてるかもだけど」

「頑固だなあ。まあいいんじゃないか。って言ってもブライアンも殺されそうにはなったのか、床が抜けたんだもんな」

「うん」

「…、落ちてたらブライアンもあそこにいたのかな」

「そうだと思う」

 

 

 

「出口探したらきっと、だから皆で協力、」

「だからさあ、さっきから、ガルシアだっけ? 理想論なんだよ、アタシら人数減らないと先に進めないんだって。こんだけクズ集まってんだよ? 普通に生かそうと思う?」

「…ブライアンは違うよ」

「ああ、あの良い子ちゃんね。見てたらずーっと他の人助けるか助言してるかしてるし、良い子ちゃんの面ちっとも脱ごうとしないし、かえって胡散臭いんだよあの女」「だよねえ。絶対この殺し合いさせてる側の人間の一人だよ。マリア・リーとかいう女も最初の通路でわざと銃落としてたし」

「え?」

「普通さあ、あんな状況下で銃落としちゃったらもっと焦ったり叫んだりすんのに。通路塞がれた時はあんなに泣き叫んでたんだよ? なのに銃落としても白仮面二人に挟まれても冷静なんだもんね」「いいっていいって。どうせブライアンとかいう女にほだされてそう勘違いしたいだけなんだよ」「つかあの女のペースに呑まれてたらちっとも人数減らないじゃん」「それそれ、っゔ、」「えっ何どうしたの、」「あーようやく効いてきたか、」

「何、え? うわっちょっと!」

「夜中にさあ、皆で部屋で集まって騒いでる時に残しておいた夕食の毒入りレトルト食べさせたんだよね。成功成功、」「アンタまじ悪女」「それな。首絞めた女も同性愛者のフリしたら動揺しちゃって、市販のやつに何か入ってたフリして酔ったフリして襲ったらもうすぐに殺せたもんねえ」「やべえー!」

「ま、待ってこの部屋の残り人数とか出る方法、まだ何も伝えられてないよね?」

「地下二階の教室の時みたいに人数減ったら生きて出られる確率高いじゃん。今四面楚歌なのもうアンタだけだよ」

 

 

 

「何か仲間割れしてない?」

「あいつら別に仲良いってわけでもなさそうだったしいいんじゃね。むしろ人数減らしてくれてマジ大助かり」

「それな。まあ此方の人数は生き残るよねえ、此方にはEXITの扉あるけどあっちには無いもん」

「そこにあっちから此方に入れそうな扉あるけどね」

エバンスだっけ。私らアンタらと仲良くするつもり無いけど」

「協力した方がこの建物から出やすいかもしれないじゃん」

「ないない」

「ねえ、ブライアンちゃんはあの扉どう思う? ってさすがだなあ、既に扉前か」

「あっごめん、」

「いや何故謝る?」

「まあブライアンだからねえ。んで何かわかったあ?」

「うん、ただのダミーの扉かとも思ったけど、頑張れば開きそうかなあ」

「えっ何開けてみる?」

「でもそうするとピンクのグループ全員此方来るよなあ」

「そしたら私らヤバくね? あいつら何か夕食のレトルトとかドライヤーのコードとか使ってるし、」

「床に落ちてるベッドとかの棒とかでも攻撃できそうよね。そうなると開けた私達の方が不利ね」

「だあよねえさすがスミスちゃあん」

「此方には銃もナイフも何も、あ、スクリーン点いた」

『皆さん、おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?』

「お前のせいで大して眠れてねえよクソが」

「マジそれ」

『今から皆さんにはBETしてもらいます。BETして賭けに買った場合、銃を一丁貰う事ができます』

「マジで? やるやる、うぉわ、」

「えー何これ」

「あー一人ずつしか入れないのかコレ」

『一人ずつボックス内に入りBETした後で賭けに勝つと、ボタンの下から銃が出てきます。銃は全部で9あります。勝った人数が二人以下の場合、勝った人間にだけ銃が複数渡されます。頑張って下さい』

「10じゃねえんだな」

「あれじゃねガルシアちゃんの後ろに出てきたあれ銃じゃねあれで10だよ」

「ホントだ、つか銃最初のホールの時からの使い回しじゃね? 弾ちゃんと入ってんの?」

「ジョンソンのとかに当たればたぶん」

「あーそれ」

「で、何に賭ければいいの?」

「賭け事苦手なんだけど~マジさっぱりわからんし~」

「内容は自分で決める? 随分自由だなあ」

「えーつか申告内容あっちに聴こえるって事?」

「そうなるな。まあ私は一人だけ生き残るのに賭けるかな」

「私も~」

「私は三人にしとこうかな」

「えーじゃあ私二人かな。ブライアンちゃんはどうする?」

「うーん、ちょっとこれ自由過ぎてどうすればいいかわかんない…」

「頭堅いなあ」

「私はガルシアが生き残る事に賭ける」

「あーまあ銃ゲットした唯一の人だしねえ」

「…ブライアン? 大丈夫?」

「あ、うん。…うん、決めた」

「え、この黄色いメガホンマイクの中に言えばいいの?」

「えーこれ周りに声聞こえないんじゃん?」

「ボックス閉められたらさらにな」

「ホンそれ」

「つか開いた途端銃ぶっ放すとかナシにしとこうな~」

「まあ生き残れるならしないでおいてやるよ」

「うぅわエバンスお前マジむかつく」

「ハッ、」

 

 

 

 ~ 残り人数、…19。 ~

第一部「密室2日目」(対象…14歳のマリア名の少女、残り21名)〜『再スタート前』

再スタート前。

 

 

 

 白い照明が、白い化粧室内を明るく照らす。白壁に掛けられた白地に黒針のシンプルな時計が七時十分強の時刻を示す。くぐもったシャワーの音が響く化粧室内へ向けてシャワー室側の扉が開き。髪を濡らし出てきたブライアンに、彼女の後ろから続けて出てきたルイスが「ブライアン、おはよう」と声を掛けた。肩を少しビクッと震わせたブライアンが一重の目を少し見開いて肩にかけていた白タオルの両端を両手で握りルイスに振り向く。

「あ、ルイス。おはよう」

「…大丈夫か?」

「ああ、うん。ごめん、ちょっと呆けてた」

「眠いか? 見張り組の後半だったよな」

「うん。ごめん、何でもないよ。ルイスもあの後起きてたんだよね。ルイスは眠くない?」

「ああ、問題無いよ。ふふ、悪い、そっちの部屋の誰かとブライアンが二人組で出てくる時、割と遭遇したのを思い出して。ハハ、」

「っふふ、そうだね、あんまりにもタイミング良いから、途中でスミスが勘ぐっちゃって。ふふっ、悪いけど笑っちゃった、本当にタイミング良いんだもん、ルイスったら、アハハ、あー、ヤバいもうー、」

「ハハハ、はぁ、…私もつい笑ってしまったなあ、まだ皆寝てるだろう時間だったのに、凄く困ってしまったよ、ふふ。…やっぱり部屋のメンバーと何かあったようには見えないんだが、体調でも悪いのか?」

「ううん。皆とも、喧嘩とか変な空気になったとかも無いよ。まあ好かれてるとかも思った事は無いけど…」

「ブライアン、白の仮面が人捜しでこの殺し合いを計画した可能性を私達に話してから、ずっとこうなんだよね。おはよ、ルイス。ドライヤーもらいっ、」

「あっ、ガルシア。おはよう。…ふーん、そうなのか」

「あー、その、そんな事は、あ、ルイスこっちのドライヤー先にいいよ。私髪にタオル巻いて先に歯磨きとかしちゃいたいから」

「ありがとう、じゃあ遠慮無く。短いからすぐ使い終わる」

「うん、まだ時間あるからゆっくりでいいよ。…でもその、誰を探してるのかとかは気になるなーくらいだし」

「なるほど。…まあ、9歳で生き別れになった家族がいるならそう勘違いしてもおかしくはないか」

「あっ、今妄想癖かとか思ったでしょ、ルイス」

「いいや。まあ、私らの年齢ではたまにいるからな。しょうがない。ふっ、」

「ち、違う! 違うよー!」

「うん。私らの年齢にはたまにいるからね。…っふふ、」

「ガルシアまで!」

 髪を乾かしながら笑う二人に否定しながら顔を少し赤くするブライアンの背後から、ウィルソンとブラウンが彼女の首に腕をまわして笑いかける。

「まあそうだな、ブライアン嬢はたまに妄想少女なところがあるからなあ?」

「ウィルソン?」

「そうそう、まあ私もたまに妄想するなあ、理想の王子様がとかお金がたくさんあったらとかあ、」

「も、って。あー、でもお金かあ、」

「するのかするのか、さすがお金にがめついブライアンちゃんだ」

「えっその話まさか、」

「そうでーす私ミラーがバラしちゃってまーす」

「あーちょっとミラーああ」

「ちょっと止めてあげたら、三人共。ブライアン歯磨きセットずっと手に持ったままじゃない」

「スミスちゃんが言うなら止めてあげるしかないなあ、ふふ、ブライアン嬢命拾いしたな! ハハハハハ!」

「え、この掛け合いで殺されるところだったの私?」

「いやいや、からかいがいあるからな、ブライアン嬢は」

「ホントホント。あ、ガルシアちゃん髪巻いてあげよっか? 私そーいうの得意だよ~」

「ありがとうブラウン。でも大丈夫、巻き髪は学校関連の時にしかしないって決めてるの。三人はシャワーは後にするの?」

「うん、凄い混んでるし。ってか、今空いてるの例のツインテールの女の死体ある側しかないからさあ…」

「ああ、なるほど」

「あれ、てか今違う子達が片側全部使ってるって事は、三人は?」

「私は昨日使った場所使ったよ~。歯磨きするね、」

「私も同じ場所を使った」

「私は昨日あのツインテールの隣だったから、さすがに今朝はブライアンの隣使ったわ」

「…え?」

「ほうほう、このミラーが推理してしんぜよう、つまりはツインテール側のシャワー室の一番左端をガルシアちゃんが、その右隣をブライアンちゃん、そしてその右隣をルイスちゃんが使ったという事かな?」

「そうね」

「そうだな」

「ブライアン、大丈夫よ歯磨きに集中していいわ」

「三人共頷いている、という事は、えーマジでええ?」

「えっ怖くないの? 怖くないの?」

「えーちょっと私だったら超怖くて使えねえぞマジ相手がツインテールであっても!」

「あ、まあ私は二人を挟んでだったから…」

「んむ、」

「問題無いスミスちゃん、君の歯磨きを邪魔はしない。…ブライアン嬢もルイスを挟んでだったからと? ほうほう、」

「いやブライアン嬢は度胸あるとか肝座ってるからだろ」

「あーまあそれ。いやでも一番凄えのはルイスちゃんじゃん、あっミラーのちゃん付け移った、」

「あー、…ええと、」

「そう、ここで一番不思議なのはミステリーなのはルイス君、君だ! 君は一部屋分の空きがあるとはいえ、っ、ふふふふふほほほほほほほほほほ」

「だっ、大丈夫かミラー!」

「ダメだ怖がり過ぎて頷くだけのマネキン人形みたいになってる、ミラー! ミラーああ!」

「くっ、こんな時にミラーの最愛のあの、スミスちゃんが、歯磨きで忙しくなければ…!」

「ねえ、」

「いやでもスミスちゃん歯磨き早えな。もう終わるか」

「おいミラー復活すんの早えな」

「ふふふ最早不思議過ぎて吹っ飛んだわマリア・ミラー、復・活!」

「えってかルイス、そのワックスどこにあったの? ワックス以外にもあるって事?」

「ああ、ここの引き出しに入ってたぞ。洗わないトリートメントとか色々ある」

「ねえっ、」

「歯磨き終わったからドライヤー借りるね、ルイス~聞いてないか、」

「ブライアンそれ元々貴女の所にあった物よね?」

「ねえってば!」

「「「「「「「ん?」」」」」」」

 四台の洗面台前で騒々しくしていた7人に掛けられていた声が声量を大きくした事で、7人全員が同じ方向に振り返る。白や水色のタオルを肩にかけた三人の少女達が声を出して笑いながら、赤髪の少女の肩や背を叩いた。赤髪の少女が苦笑しながら小さな笑いが漏れる自分の口元に手を当てて咳払いをする。

「あー、やっぱ後でいいわ、貴女達の部屋一番平和そうだし。楽しそうなのに悪かったわ、」

 謝罪して薄緑のタオルを肩にかけたまま、私物が置かれていた洗面台数台の方へ赤髪の少女が歩き去る。彼女の後を追いながら、三人の少女達が「じゃね~」と笑って手を振り笑顔で赤髪の少女の近くの洗面台前の椅子へ腰を下ろしていく。仲良くドライヤーを使う4人に対し、ウィルソンがブラウンを顧みる。

「え、何? 私ら何かした?」

「まあアタシ達の部屋って平和だよねえ」

「ま、そーですね~」

「否定はしないわ」

「あ、ワックス案外種類ある。私が持ってるやつは無いみたいだけど」

 髪のスタイリング剤が入っている引き出しを見下ろすガルシアに後ろから抱きついたブラウンが一つ一つの説明を始め、ウィルソンが茶化しミラーとスミスが三人を見て和やかに談笑する。

 髪の上に白タオルを乗せながら髪を乾かし終えたブライアンが自分の座る洗面台の引き出しの中から化粧水と美容液入りの下地を選び、掌サイズのそれを台のサイドに置く。隣の洗面台の引き出しから化粧品を数個出し同じ場所に置くタイミングでルイスの顔を視界に入れ小さく首を傾げた。

「…ルイス? どうしたの、」

「…、いや、…何でもない」

 

 

 

「昨日の夜よりは市販の多かったね」「つっても夜食のが安心して食べられたけどね」「全部市販のだったもんねえ」「えっ何それ知らないんだけど」「あーアンタぐっすり寝てたからね~」「えー、」

 赤髪の少女と他三人の少女が扉に青線の入った部屋へ入っていく。ウィルソンとブラウンが返却扉にレトルトパック等が乗せられたトレーを入れて閉めた。

「今朝のはパンの他に一個だけ市販のあったな」

「あーあれ紙パックジュースね」

「私あれ好きよ」

「私スミスちゃん好きよ」

 ウィルソン達の後にトレーを入れるスミスとミラーを後ろにガルシアが「ブライアン、距離置こう」と真顔で言ってブライアンの隣を歩く。苦笑するブライアンが黒線の入った扉前に2人の少女がカードキーを手に立っているのを視界に入れもう片側の隣にいるルイスへその視線を向けた。

「あれってルイスが使ってる部屋だよね?」

「ああ。…部屋が開かないみたいだな」

「ねえ何で開かないの?」「私のカードは? …いやちょっと開かないんだけど!」「あ、ルイス! ルイスのカード貸してくんない?」

「ああ。はい、」

「ありがと!」「…えー、開かないー!」「うっそお、まだ上着残してたのに…」「ヤバあ、」

 ウィルソン達の他にルイスとその同室の二人のみの食堂で、スミス達と合流したウィルソン達が自分達の部屋へ向かう。

「えー、やっぱカードの部屋開かなくなったりしたんだ」

「ブライアン嬢の危惧してた通りだなあ」

「普通の鍵の部屋で良かったわね」

「見張りの時間あったからちょっと疲れたけどね」

「ぐっすり寝てたじゃんミラーは」

「ブラウンちゃん寝れなかったの?」

「いや寝た気しないだけだよ、だってこんな状況だし」

「まあなあ。あ、ルイスが力技で開けてる」

「…でも開かないみたいね」

「黒人パワーで開かなかったら無理かなあ。残念だねえ」

「ていうか人数足りなくない? さっきから」

「あー、朝食の時間も凄い数少なかったよねえ」

「寝坊したんじゃねえの? 時間だらしなさそうな奴らだったし」

「私ら他人の事言えなくない?」

「まあねえ。食欲無いとか色々ありそうだけど、まさか、」

「まさかのまさか?」

 ブラウンの言葉にウィルソンが「怖えー」と肩をすくめると、ブライアンが赤線の入った扉前に立つのが見えた。

「ピンクの部屋に? ブライアンちゃん勇気あるう」

「でもノックしても声掛けても返事無いねえ」

「あーまあブライアン嬢にムカついてんじゃね、昨日も真似しておいて何かグチグチ悪く言ってやがったし」

「あーそれ。私らに対しても何か遠回しに何か言ってたよねえ。マジムカつく」

「ホント。死んでれば清々するんだけどなあ」

「でもあの出口の上の電子パネル、22のままよね…あ、ブライアン帰ってきたわ」

「で、ブライアン、あの部屋どうだったの?」

「全く反応無かったからベッドルーム前の小さい部屋入ったら、ドアごと全部…部屋のある場所全部無くなってた」

 緑線の入った扉中の寝室に入ったメンバー全員が驚きウィルソンが「は?」と声を出した。上着を着て外していたアクセサリーを全て着けるかポケットの中に入れたり等した四人達にブライアンが続ける。

「床も無かったよ。階段大分上がってきたけど、あの高さ位は落ちてるみたい。壁も変に擦り切れて、まるで落ちる時に壁も巻き込んでたみたいになってた」

 口々に「えー?」「あー、」「怖え、」と呟く彼女達を前に髪を下ろしたままのミラーが上着を腕にかける。

「やっぱ何か仕掛けられてたんじゃない~?」

「人数オーバーしたからじゃないかな」

「ガルシアも思う?」

「確かに昨日スミス嬢言ってた注意事項のところにもあったけど。人数オーバーしたら地に墜ちるって、」

「こっわ、」

「でも人数そのままだよね」

「ああ、パネルの数? でもあれ合ってるかは、」

「このブレスレット、体温測れるやつかなって思って。他の皆も最初のホールの時から言ってたらしいけど、この厚みどう考えても何か入ってる。これの反応する人数とあのパネルが表す人数が同じなら、」

 ブライアンの言葉の途中で隣室から悲鳴が続けて聴こえ、ブライアン達の部屋が一瞬冷えた静けさに包まれる。ブラウンが上着の裾を握り寝室の入口傍に立った。

「え、隣の部屋から悲鳴聴こえたんだけど」

「怖え」

「ちょっと待って、今何分?」

「あ、そろそろ食事時間終わるわね」

「シャワー室開放されるよ、急ごうウィルソン」

「あーオッケー。ブライアンとガルシアは部屋で待ってる?」

「いや、今の話と隣の悲鳴聴いたらちょっと、」

「わかった、じゃあ皆荷物ってか服とか全部持ってこう、二人共荷物持ちと見張りお願いしていいか?」

「OK」

「私も。髪とメイク両方終わってるし問題無いわ」

「二人はあと歯磨きくらいかしら? あ、ノートとペン、」

「あー、ごめん私先行ってる! 時間かかるかもだし」

「あー私ももう行く、ごめん二人最後に出て何も残ってないか確認してくれる?」

「そうだな、よろしくっ、」

「了解。ガルシア、私部屋奥のベッド側から行くから扉前の談話スペースからお願いしていい?」

「OK。…まあ、皆ブライアンの言う通りに私物全部仕舞わないで出してたから大丈夫だとは思うけど、…引き出し、全部開けられないわね、なるほど、」

「一応布団の中と下も確認していくね、…何も無いです、」

「こっちも何も無いわ、出ましょう、」

「うん!」

「あ、食事時間終わる、」

 寝室の扉を開けながら小走りで来るブライアンを待つガルシアが食堂の白壁に掛けられた時計を見上げ針の位置を確認した、その時。談話スペース側すぐの扉に手を掛けたブライアンが「うわっ、」と軽い声をあげ、同時に低く高く裂き崩れ滑り落ちていく轟音が腹の底に響くように鳴った。雪崩音に肩を震わせたガルシアの視界に、床が抜け暗く深い穴に片足をぶら下げたブライアンが寝室前の小部屋の床に踏み入れた足を踏ん張ってガルシア側に跳ぶ姿が入る。ドアノブを掴んだガルシアが扉から手を離し食堂ホールに駆け緑の寝室を後ろに足をすくめ食堂床にへたりこむ。ブライアンの姓を呼びながらガルシアが後ろを顧みると、抜けた床を顧みていたブライアンが片手で顎下に触れ少し引きつった笑みで彼女へ振り返った。

「私は大丈夫、…ビックリした、」

「食事時間終わると同時?」

「みたい。出て良かった…」

「うん…、まさか、……ねえブライアン、」

「ブライアン! ガルシア! 早くー!」

「あ、今行く! ごめんガルシア、化粧室行こう、」

「…うん、」

 

 

 

 ~ 残り人数、…21。 ~

第一部「閑話休題、1」〜『登場脇役FILE、1』

登場脇役FILE、1。(オマケ→ページ内後半)

 

 

 

第一部「脇役FILE、1」…計37名。

(※.メイド達と執事達は其々同No内に纏めます)

(※.美形しかいません)

 

 

 

『若奥様と若旦那様』…計2名。

 

脇役No.1「若奥様」

 容姿…緩いウェーブの金髪ロング。若い内は濃くしたくない理由により薄化粧。美容意識が高く使用品の原材料にも拘る。身長3m代前半。仕事時はスーツ一択。スーツスカートは以前仕事中に破った事があるのでそれ以来避ける様に。美形ランクはS。胸は実は控え目だが防弾ブラで普通の大きさに見える。

 補足…怪力。お酒の失敗経験により飲酒は控えている。子供舌だが珈琲やお茶はノンシュガーじゃないと無理。裏組織総なめ所属。裏組織解体や衛生的に世界滅亡系の仕事が中心。若旦那様との間の可愛い第一子の愛娘が行方不明の為探している模様。

 

脇役No.2「若旦那様」

 容姿…ストレートの黒髪。髪型は普通。身長3m代中半。スーツ姿では細身シルエットだが筋肉が凄い。美形ランクはS。

 補足…若奥様より怪力だがたまに負けている。モブい為に若奥様に仕える執事長より美形ランクが若干劣る。若旦那様に仕える執事とメイドは普段から姿を隠し神出鬼没の為忍者と呼称される事がある。諜報機関総なめ所属。スパイに入る時は必ず相手に自分がスパイである事を事前に告げるが必ず試験合格している。

 

 

 

『執事長とメイド長』…計2名。

 

脇役No.3「メイド長」

 容姿…ブロンド髪を後頭部の高い位置でお団子状に纏めている。髪一本も垂らさず乱さない。低めの美声。美形ランクはSだが化粧でモブくしている。身長は若奥様と同じ位。

 補足…メイド達とは同じか一つ二つしか年齢が違わない。守銭奴。ストレス発散方法は暗殺の仕事で体を動かしお金を頂戴する事。それ以外は私生活含めミステリアス。

 

脇役No.4「執事長」

 容姿…黒髪。仕事時はオールバック。髪一本も垂らさず乱さない。美声。美形ランクはS。控え目にはしているが若旦那様よりキラキラ度が上。身長は若旦那様より若干高い位。

 補足…最近メイド長と交際開始。ストレス発散方法はたぶんメイド長と同じ。私生活含めミステリアス。後輩想い。

 

 

 

『執事達とメイド達』…計30名。

 

脇役No.5「メイド達」…計15名。

 補足…結束が堅く高い。ストレス発散方法は暗殺の仕事で体を動かしお金を頂戴する事。美人しかいない。執事長とメイド長のファン。

 

脇役No.6「執事達」…計15名。

 補足…結束が堅く高い。ストレス発散方法は暗殺の仕事で体を動かしお金を頂戴する事。美形しかいない。執事長とメイド長のファン。

 

 

 

『謎の社長』…計1名。

 

脇役No.7「謎の社長」

 容姿…普通の長さの黒髪。CMに出れそうな潤艶サラ髪だがその事を本人に言った際に一般CMのアメニティは嘘吐くから嫌いとそっぽを向かれたとの事。身長は3m弱と高身長で新米秘書より背が高く未だに身長は伸び続けている。美形ランクは文句無しのSでビーチ等で遊ぶ際にナンパされるのは普通だがしつこい相手は後で暗殺して暗殺の仕事としてお金をちゃっかり貰っているらしい。

 補足…新婚だが裏宗教結婚の為に相手は別姓の儘で自分の家の人にもなっていないらしいがAIRAM-Project関係者とその血縁と契約を結んでいる人達とその血縁以上全員が同じ宗教らしい。ポリシーと心情は自分の会社の社員には手を出さない。

 

 

 

『謎の秘書』計2名。

 

脇役No.8「美人秘書」

 容姿…プラチナブロンドのロングヘア。仕事中は後ろで一つに纏めるがTPOに合わせながら毎日違う髪型だったりする。社長曰く一年で同じ髪型とスーツの組合せを見た事が無いらしい(写メで一年記録した結果)。Sランク美女だが画面内にその顔が出た事が無いがAIRAM関係者全員一人残らずSランク美女だと頷ける容姿らしい。身長2m代後半と高身長でスレンダーだが着痩せする。若奥様よりは女性の凹凸があるのは全AIRAM関係者が認めた。

 補足…実は謎の社長の秘書ではなく別会社の秘書。今回は応援で仕事に来ていただけ。

 

脇役No.9「新米秘書」

 容姿…ブロンドの癖毛を横に流している。身長は2m代後半と一般人より高身長だが社長の身長は昔から抜けないらしい。美形ランクA。

 補足…此方の秘書はちゃんと謎の社長の会社の秘書。実際に美女秘書はこの新米秘書の先輩らしく同校出身らしいがどの領域での同校かは不明。

 

 

 

『追加、正体不明男性』…追加、計1名。

 

脇役No.10「正体不明男性」…計1名。

 容姿…不明。身長は若旦那様と同じ(年齢も)。容姿は整っているが不運により中々開示されない為か美形ランクはA-B間。

 補足…執事達に紛れ若旦那様の様子を見に来た(遊びに来た)。お菓子や飲み物を貰って寛いでいる時に若旦那様に遊びに来ているのを見つけられ絞められる。温厚そうだが頑健で実力は若旦那様より上だが不運によりそれが発揮される場が少ない。NASA所属。最近自分の奥さんが変な実験ばかりする事を嘆くが自分も同じ事を言われている。

 

 

 

第一部「脇役FILE、1」…全38名、以上。

 

 

 

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第一部「脇役FILE、1」…オマケ。

 

 

 

「『AIRAM-Project第一弾』使用建造物詳細、2」

(※.第一部1日目に使用&会話内登場場所のみ)

 

 

 

『スタート』

~「1.謎会議室/2.黒い建造物」

 

1.「謎会議室」

 若奥様、若旦那様、メイド長、執事長、計四名が使用していた会議室。小さい窓に見えたのは小窓型の照明。横に本当の大きい窓がある。広さはそこ迄広くない(教室の三分の一位の広さ)。部屋が暗かったので会議室以外の用途は不明。

 偶に会議室が無くなったり建物自体ごと無くなったりするらしい。

 

2.「黒い建造物」

 AIRAM-Project第一弾の為だけに一週間で造られた黒い建造物。米国某郊外の背高樹木林と砂の荒野の間を走る道路の前にある。

 一週間で造られた割には違法や欠陥が無いが、(本人達にとっての)低予算で上から鉄骨と木材を重ねて造られた欠陥無しのズボラ建築。鉄骨木材窓その他は全て新品だが全て駆出しの新会社からスタートダッシュお手頃価格で買い付けている。お手頃価格の取引材料は広範囲での告知CMと他企業への紹介と取引先固定継続契約によるもの。全新会社がAIRAMプロジェクト関係者達の知人友人や弱味を握られている人達の会社。

 場所によってはすぐに崩れるらしいが計算した上で崩れる様にしているらしい。外部からは出入口と窓が無い様に視える全て真っ黒のデカい建物にしか見えない。

 

 

 

『第一通路』

~「1.街中の喫茶店/2.謎の社長部屋、一/3.謎の社長部屋、二」

 

1.「街中の喫茶店

 クリスマスの時期に雪が少し降る米国のとある街の喫茶店。ホテルビル内の店舗なのでちょっとお高く且つレベルが高いけど必ず程良く人がいるお金回りの良い店。個室が沢山ある上に話し声が伝わり難い構造なので秘密話に丁度良い。

 シンプル且つ質の高い物で揃えられたインテリア等の趣味と味の良さでファンが多いが、それ以外の点でもファンが多いらしく、その一つに店の人が一人残らず美形な点があるが一人残らず暗殺の仕事も請け負うとある諜報機関員(MARIAではない)だったりする。

 

2.「謎の社長部屋、一」

 一つ目の部屋は黒い建造物の角部屋。森と荒野両方の景色が見えるので位置は道路側かと思われる。白壁の何処かにクローゼットがあり、そこに社長用の子供用オモチャが大量に仕舞われている。一番良い窓を使っている部屋の一つ。米国郊外のクリスマス時期でも温かい。

 

3.「謎の社長部屋、二」

 二つ目の部屋は一つ目の部屋の隣。森側。入口入ってすぐから通路側壁の方に下階への階段がある。景色が良い。

 社長が一人で引き籠もって仕事するには丁度良く、また美女秘書曰く閉じ込めて仕事させるのに丁度良い部屋との事。

 デスクも関係者の新会社が作った物で、地震や火災で綺麗に無くなるのに使用中は頑丈な安心設計。表面上は質の良い木材だが内部使用素材は不明。

 

 

 

『二室目』

~「AIRAM-Project第一弾監視室(12名用)」

 場所は例の黒い建造物ではない様子。窓無しの監視室。暗い。あまり広くはなさそう。噂では関係者内の誰かの会社の一室を利用しているらしい。AIRAM-Projectに使用するのは今回限りにする予定だとか。

 

 

 

『第二通路』

~「1.監視映像室、男性二名用/2.若奥様と若旦那様の仕事部屋」

 

1.「監視映像室、男性二名用」

 二つ目の社長部屋内の階段を降りた先の部屋。窓無し。そんなに広くない。作業用白テーブルが中央、壁側両サイドに作業中の飲食物用のサイドテーブルがある。新米秘書が淹れる珈琲と飲料が何処にあるのかは社長は見ていないらしい。

 

2.「若奥様と若旦那様の仕事部屋」

 黒い建造物の角部屋その二。見える景色から、一つ目の社長部屋と反対側にある様子。一番良い窓を使っている部屋の一つ。使う人数に反比例し割と広いが初日の一定時間迄しか使用されない様子。景色が良い。

 

 

 

『三室目』

~「AIRAM-Project関係者"4番目"の仕事部屋」

 通信用枠内の隙間からしか見えない上に白仕切りパネルが後ろにあるらしく、室内の様子は全くわからない。他のNo持ち曰く、仕切りパネルだけで作られたAIRAM-Project監視仕事兼4番目の仕事用の三日間限定ボックスらしい。

 ボックスの外からはセクシー美女秘書の声や他の社員の声が聴こえる様だが、時折セクシー美女秘書や社員が騒々しい音と銃声等の騒音下で轟音の様な雄叫びや罵声を相手に浴びせるBGMも時折聴こえる。クリスマスが近いと割と多いらしい。

 因みに一切れのクリスマスケーキはRANちゃんの姿がよく映える様に置いただけで本人は一切手を付けていない(仕事とRANちゃん観覧タイムで忙しかったらしい)。

 

 

 

『第三通路』

~「1.二十五m温水プール/2.女性専用監視映像室」

 

1.「二十五m温水プール

 「AIRAMプロジェクト第一弾専用食堂ホール」下、地上一階にある。男性と女性で泳ぐ場所が違う。窓側はペットボトル飲料のみ持参可能のビーチスタイル白カウチあり。偶にメイドさんを盗撮する執事がいるがキチンと漏れ無く絞められている。執事を盗撮するメイドは逃げ足が速い様子で監視映像室や食堂の隅で盗撮写真や映像の売買が建造物内外で取り行われている。

 

2.「女性専用監視映像室」

 殺し合いを強要される少女達の監視映像室。相手が女性なので女性しか監視不可である。尚、謎の社長含む他の監視映像確認必要がある男性達へ映像を送る際は必ずこの部屋の女性達が肌の露出が多い箇所にチェックマークを入れる。チェックマークの入った映像は謎の社長の部下の一部の女性達がマーク箇所にモザイクや黒ベタ若しくはアイコンシール等で隠す処理をし、処理完了後で初めて男性陣が映像確認可能となる。

 男子禁制の女性のみの聖域で、銃やナイフの練習を偶にする暗殺のプロ顔負けのメイド達がいるので物騒な場所の一つでもある。

 男性専用の監視映像室での監視映像は黒い建造物出入口と周辺映像の監視のみだったりする。基本暇なので、勤務時間中の執事の大半は食堂での給仕かトレーニングルームでの筋トレ等に励んでいる。

 

 

 

『休息時間、一』

~「少女達への配給食準備室」

 電子レンジの他にはレトルトパックと市販の品を保存する棚と広い作業テーブルだけの簡素な白い部屋。出入口に身に着けるビニール製と布製の作業服着脱室が男女別にある。

 準備室の隣はカラクリ式の木製作業レーン部屋があり、作業レーン部屋の隣に少女達が1日目夕刻より集まる食堂がある。

 尚、少女達関係者問わず建造物内の廃棄物は全て、建造物のある同州の決められた曜日に廃棄されていくが犯罪の多い地域なのもあってかいつもより多い量に疑問を持つ住人はいない様子。

 

 

 

『休息時間、二』

~「AIRAM-Project第一弾専用食堂ホール」

 地上一階にある「二十五m温水プール」の真上にある。少女達以外の関係者は全員入室利用可。遊びに来ただけの若※.追加項目…マリア・ガルシアにより銃殺され死亡。旦那様の知人男性もちゃっかり貰いそして絞められている。

 女性陣が監視映像で多忙の為に給仕担当は執事のみ。偶に銃やナイフが飛び交うが暗殺のプロ顔負けレベルしか入室利用しない上に建造物に当たらない様にしているので特に問題は無い。

 

 

 

『休息時間、三』~「(脇役サイド用の部屋描写無し)」

 

 

 

第一部「脇役FILE、1」…オマケ、以上。

第一部「閑話休題、1」〜『死去少女FILE、…1』

死去少女FILE、…1。(オマケ→ページ内後半)

 

 

 

第一部「密室1日目」死去少女人数、…計18名。

(以下死亡順/追加項目は割愛箇所有)

 

 

 

『一室目』…計10名。

 

☑MARIA-No.39「MARIA SULLIVAN」□

 犯罪歴…動物虐待、児童虐待、殺人。

 ※.追加項目…膝を抱え座っていたところをマリア・ウィルソンにより銃殺され死亡。

☑MARIA-No.18「MARIA BARNES」□

 犯罪歴…麻薬を除く殆どの犯罪歴あり。

 ※.追加項目…マリア・ガルシアとの銃の取り合いに負け銃殺され死亡。

☑MARIA-No.38「MARIA BENNETT」□

 犯罪歴…麻薬、密売、詐欺、殺人。

 ※.追加項目…銃の取り合いでマリア・ルイスに負けた直後マリア・コリンズにより銃殺され死亡。

☑MARIA-No.32「MARIA ROSS」□

 犯罪歴…不法侵入、盗み、詐欺、他。

 ※.追加項目…友人のマリア・ジェームズに盾にされた事でマリア・ルイスにより銃殺され死亡。

☑MARIA-No.33「MARIA JAMES」□

 犯罪歴…不法侵入、盗み、詐欺、他。

 ※.追加項目…友人のマリア・ロスを盾にし彼女が銃殺された直後マリア・ルイスにより銃殺され死亡。

☑MARIA-No.03「MARIA BROOKS」□

 犯罪歴…麻薬、密売、盗み、詐欺、他。

 ※.追加項目…マリア・ガルシアに肘打ちされた後マリア・クーパーにより銃殺され死亡。

☑MARIA-No.13「MARIA HOWARD」□

 犯罪歴…詐欺、盗み、殺人。

 ※.追加項目…マリア・ガルシアにより銃殺され死亡。

☑MARIA-No.14「MARIA KELLY」□

 犯罪歴…盗み、殺人、麻薬、万引き。

 ※.追加項目…盾にされた後銃殺され死亡。

☑MARIA-No.35「MARIA GOMEZ」□

 犯罪歴…麻薬、密売、不法侵入、殺人。

 ※.追加項目…盾にされた後銃殺され死亡。

☑MARIA-No.06「MARIA REED」□

 犯罪歴…強奪、殺人、密売、他。

 ※.追加項目…銃の取り合いに勝つがマリア・リチャードソンに銃を奪われそのまま床に落とした彼女に暴言を吐いた後背後から最初から銃を持っていたマリア・リーにより銃殺され死亡。

 

 

 

『二室目』…計5名。

 

☑MARIA-No.01「MARIA RICHARDSON」□

刑事の娘。

 容姿…黒髪ショートボブ。地毛はブロンド。

 家族構成…刑事の父親、役所勤めの母親。刑事を志す兄が二人。

 犯罪歴…万引き、盗み、殺人。

 犯罪歴補足…幼少期よりイジメに遭いイジメ回避の為に付き合いで万引きとスリを繰り返す。主に刑事の娘の立場を利用した陽動のみで実際にやる事は少ないが他の女子に言われ実行した数は十件以上。以来普通に万引きとスリを行う様になる。ブロンド髪を黒髪に染めるのは強要された為だが母親が黒髪の為染髪によるものと気付かれ難い。染髪剤は盗んだ物だが家族には友達から貰ったと嘘を吐いている。家族も全員犯罪歴があり、全員同じ犯罪を行っている。殺人は14歳になってから周りで流行っていた事を自ら進んで行ったが、その流行りは一部で流れる根も葉もない噂話だった。

 ※.追加項目…教室内でマリア・コリンズを抑えていたところをマリア・クーパーにより背後から銃殺され死亡。

 

☑MARIA-No.29「MARIA COLLINS」□

 犯罪歴…密売、援交、殺人、他。

 ※.追加項目…マリア・リチャードソンに抑えられた際にマリア・クーパーが彼女を銃殺したことで一時的に逃れたが、直後続けて撃ったマリア・クーパーにより銃殺され死亡。

☑MARIA-No.21「MARIA COOPER」□

 犯罪歴…殺人、密売、援交。

 犯罪歴補足…お金と保身の為に犯罪を繰り返すが捕まった事は無い。

 ※.追加項目…マリア・リチャードソンがマリア・コリンズから奪った銃をマリア・リチャードソンから盗んだマリア・ジョーンズにより、背後から銃殺され死亡。

☑MARIA-No.36「MARIA PETERSON」□

 犯罪歴…殺人、盗み、強奪。

 ※.追加項目…騒ぎの中マリア・ジョンソンにより銃殺され死亡。

☑MARIA-No.34「MARIA STEWART」□

 犯罪歴…詐称、不法侵入、万引き、盗み。

 ※.追加項目…騒ぎの中マリア・ジョンソンにより銃殺され死亡。

 

 

 

『三室目』…計2名。

 

☑MARIA-No.02「MARIA JOHNSON」□

体操の平行棒にて米国全国大会優勝経歴有。

 容姿…ホワイトブロンドにピンクと青のメッシュ入。外出時は必ずメイク。大会時は通常より濃い。身長はマリア・ブライアン(仮)より少し高い170cm代前半。

 家族構成…兄一人、弟一人。血液上では他に数人以上兄弟姉妹がいるが母親が棄てた為に不同居。

 犯罪歴…兄弟に万引きやスリを行わせる。

 犯罪歴補足…母親も万引きとスリの常習犯。母親も主に娘同様に息子二人に犯罪を行わせる。犯罪強要現場も含め目撃者多数だが気弱な人を盾にしたり押しの強さで逃れ今に至る。母親は食費に困ると実家に頼るか旦那に高い物を買わせそれを売って補っている。娘も同じ方法で複数の彼氏に同じ事をさせている。

 ※.追加項目…A通路を唯一進行途中罠により死亡。

 

☑MARIA-No.11「MARIA LEE」□

2○○4年未成年新人作家賞受賞。

 容姿…腰下迄の黒髪ストレートロング。黒縁眼鏡。歯並びが悪い。普段は口を大きく開かない様に過ごす。その為発音も少しくぐもる。

 犯罪歴…アマチュアの作品を文章ごと盗作、自分のものとしてSNSやブログにて公表。同じ方法で新人作家賞受賞、プロとして執筆した三本の作品、計四の盗作を公に出している。

 犯罪歴補足…普段から学内でもイジメをしており、自分より優れた箇所のある温厚な同性がその対象。強く言われると平伏や普通の態度を装うが裏での陰口はイジメ対象者へのものと同量になる。

 ※.追加項目…B通路のボールの針山により死亡。

 

 

 

『休息時間(1日目夕刻~翌日早朝)』…計1名。

 

☑MARIA-No.22「MARIA JONES」□

銃所持を公言していたが銃は彼女が常に所持している私物の子供用おもちゃだった。

 容姿…ストレートのプラチナブロンド。ツインテール。地毛は黒髪天然パーマ。美容室で染髪とストレートパーマをかけている。鼻が低く鼻先が少し上向き。普段は鼻上部に長めの前髪をかけて隠し、他人といる際は俯き加減で過ごす。身長150cm位。

 戸籍…本戸籍名は「二ノ宮真理亜」。日本人。東洋人差別回避の為に英名使用を役所と学校側より許可承諾済。よって通常使用名は「MARIA JONES」。成績不良により二浪中。

 家族構成…父親は営業、母親は介護士。バスケ部所属の弟が一人、弟は別州にいる祖母の家に滞在通学中。

 犯罪歴…万引き、不法投棄、学内で金銭のスリ、他。何れも注意勧告迄しか受けていない。

 犯罪歴補足…家が貧しく衣服物は全て中等部迄リサイクルショップの物のみだった。中等部デビュー直前から万引きとスリを始め、髪色と髪質はその頃から変化無し。万引きやスリはブランド物のみだったが友達ができない事によりブランドもののランクを落とすが、結果サークル活動の知り合いと昔からの同級生の知り合い、近所付き合いによる幼馴染みと転校生の表面上の友人のみ。転校生の友人には親友と呼び彼女の私物を盗むのを何度も試みるがガードが堅く未遂。

 ※.追加項目…シャワー室内で座った椅子の罠にかかり「頭の無い鉄の処女」内の針山に身体を潰され死亡。

 

 

 

第一部「密室1日目」死去人数全18名、…以上。

第一部「密室1日目」終了時点死去人数、全18/40名。☑□

…以上。

 

 

 

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第一部「死去少女FILE、…1」…オマケ。

 

 

 

「『AIRAM-Project第一弾』使用建造物詳細、1」

(※.第一部1日目に使用&会話内登場場所のみ)

 

 

 

『スタート』~「スタートホール」

 普通のステージがある小ホール。学校のステージ付体育館に近い。照明は最低限のみなので暗めだがホール全体が視認可能な位には明るい。

 白マットレスのみ敷かれていたが、マットレスもAIRAM-Project関係者の関係者の新会社の物。学校企業一般寝具子供用の遊具等幅広く展開予定らしい。が、企業情報を紹介しようとすると必ず文章が化けたり紹介箇所のみいつの間にか消えてしまったりするらしい…。

 

 

 

『第一通路』

 距離は一km程。真っ直ぐの道ではない。照明は最低限で、十m間隔で小さい照明が両サイドに二つなので本当に最低限の照光。通路の終わりに隠し通路がある。

 

 

 

『二室目』~「地下二階…教室×四ホール」

 窓が全部コンクリで埋められた閉所恐怖症には恐ろしい空間。実は地下二階ではなく地上一階だったりする(スタートホールと第一通路も同じ階)。

 当初はもう少し催しをする予定だったらしいが若奥様達の意向で急遽予定を急ピッチで進める事になったので凄く余計な空間になっている。が、この四部屋がある事で上階を支えているので無駄ではない様子。狭い部屋が沢山あると上階を支え易いと説明すればわかる人にはわかるかと思われる。

 

 

 

『第二通路』~「1.隠し部屋、一/2.第二通路」

1.「隠し部屋、一」

 高さ二m×三畳の狭い伝達専用部屋。スクリーン機能時以外は真っ暗で照明が無い。

2.「第二通路」

 地下二階から凄く上階へ登る階段のみの通路。照明は最低限のみで第一通路と同じ位暗い。支柱を軸に螺旋上に鉄骨のみ乗せてるズボラ建築。高所恐怖症には恐ろしい空間。地下二階と見せかけた地上一階から地上六階迄の一本道通路。

 

 

 

『三室目』~「針山とボタン選択の部屋」

 

 地下二階(実際は地上一階)から地上六階の高さの空間が広がる、黒い建造物内で一番広い場所の一つ。高さ六階分の空間内地下二階エリアには針山と偽の死体その他がある。各選択肢の通路は以下の通り。

 

[A].

 階段通路側からは平均台の次に平行棒をクリアした先に床に辿り着ける体操選手しか通れないレベルのハイレベル通路。二本目の平行棒とその先で待ち受ける床は油塗れで必ず手を滑らし足を滑らせる。

 実はA~Dのボタン押下箇所下部にギリシャ語で「Aは体操選手しか通れないハイレベル通路」という文章があったが、マリア・ブライアン(仮)以外は読めなかった。

[B].

 天井からワイヤーでボールを垂らしただけのズボラ通路。ボールに跳び移った途端重量オーバーで針山へ転落する。重量制限はボールが1kg、ワイヤーが10kg。Bワイヤーが垂れ下がる天井に独語で「D、ヒント、ある」とだけあった。空間内の真ん中の支柱により見えなかったが、先の通路側の全ボール下に針山が生えている。

[C].

 唯一マトモな通路。先の通路下の仏語文字の辺りから三人分の広さの床が出て、真ん中の床と合体する。階段側からも同じ床が出てくる事で一つの道になる。通路下の壁には仏語で「Bを見ればCの道の姿が想像できるだろう」とあった。

[D].

 何が出るか結局わからなかった通路。針山近くの壁には中国語で「Cは三人分の横幅の床が一本の道を作る」とあった。唯一記載が無い事から何も無いか最も恐ろしい通路だったかと思われる。

 

 

 

『第三通路』~「1.隠し部屋、二/2.第三通路」

1.「隠し部屋、二」

 一つ目の隠し部屋と同じ高さ×広さ。伝達専用のスクリーンはあるが照明は無い。上から落ちてきた捨駒の少女を入れる為に天井が開く仕様。

2.「第三通路」

 照明はやはり最低限で他通路と同様の暗さ。通路始まりと中間地点に大量のポリ袋があるが発注ミスによるものとの事。余裕の無い少女達は大量に一掴みしてしまったので数に問題は無かった様子だが、プロジェクト依頼受注側の人間に守銭奴しかいない為に発注ミスした者の叫び声が聴こえるイベントが発生したとの事。

 

 

 

『休息時間、一』&『休息時間、二』&『休息時間、三』&『休息時間、四』

~「1.シャワーホール/2.化粧室/3.食堂/4.寝室×四部屋」

 

1.「シャワーホール」

 シャワー室内の椅子に座ると身体を「頭の無い鉄の処女」に囚われ刺し潰される罠があるがそれ以外は普通。市販のメジャーアメニティはそのままで安全だが市販じゃないボトルは各シャワー室ごとに違う毒が入っている。マリア・ジョーンズの使った物は筋肉硬直種の毒剤入だった。

2.「化粧室」

 洗面台ごとに引き出しに入っている物が違う。マリア・ブライアン(仮)達は予め引き出し内をチェックしその情報を他の人と共有していた様子。

3.「食堂」

 白テーブル二台を合わせた一セット三つが中央にある。椅子の数は20しか無かった為一部の少女達が同じ椅子を共有していたかと思われる。マリア・ブライアン(仮)のテーブルでは全員一つずつ使用していた。

 

4.「寝室×四部屋」

 寝室前に人二人分の小部屋があり、そこに注意書きが貼ってある。カードキー部屋は全て床が抜け易い構造。小部屋と寝室は同じインテリア。部屋の並び順はEXIT扉側から見てabcdの順。

[a].ピンク一色部屋。カードキー部屋。無駄に一番広く、教室一つ分の広さ(四十畳位)。ベッドはダブルが二つにセミシングルソファベッドが一つ。脚付きマットレスに見せかけのヘッドボード等が付けられている。ロマネスクゴシック風。

[b].白と黒の部屋。カードキー部屋。二番目に広く、教室の三分の二程の広さ(二十七畳位)。脚付きマットレスシングル全五台を続けて並べている。ハイセンスな現代風。

[c].白と蒼の部屋。カードキー部屋。一番狭く、教室三分の一程の広さ(十三畳位)。セミシングルサイズ段ボールベッド全五台を続けて並べ、その上に布団、と一番簡素。

[d].白と緑の部屋。唯一のアナログキー部屋。配給扉側。配給扉側の為床と床下の階の造りが良い。造りが安定している分そこそこ狭く、教室半分程の広さ(二十畳位)。一番普通。

 

 

 

第一部「死去少女FILE、…1」…オマケ、以上。

第一部「密室1日目」(対象…14歳のマリア名の少女、40名)〜『休息時間、三』

休息時間、三。

 

 

 

 教室大の半分程の広さの、白と薄緑の色で全てのインテリアが揃えられた寝室内。簡素な脚付きマットレスベッドの、日本でいうセミダブルサイズが二、シングルサイズが二、背もたれ付きソファ型のセミシングルサイズが一。計五台のベッドの内ソファ型以外が、横一列に人一人分のみの間隔を空けて並べられ。残るソファ型は、室内角にある簡素なソファ二つと膝丈テーブル一台のある談話スペースの一部になるように設置されている。

 ソファ型ベッドにはウィルソンとブラウンが寛いで座り、唯一背もたれが頭部まである一人がけソファにはミラーが座っている。三人がテーブルに広げられたポテトチップスのパーティー開きの袋や500mlペットボトルのコーラに手を伸ばし、声量を抑えて談笑し、時々聴こえる物音や声の後でテーブル上のノートにペンを走らせる。

 寝室のインテリアの色と同色の壁掛け時計の針が、〇時半を示した時。小さな電子アラーム音が鳴り。アラーム音が三度目のループに入るタイミングで、ベッド側の壁に置かれたサイドテーブル上のアラームへ歩み寄ったブライアンがアラームを止めた。アラーム上のボタンから手を離したブライアンが少しぼやけた声と目で談話スペースの三人に振り返る。

「おはよう~。お疲れ様、三人共」

「いえいえ。はざっす、ブライアン嬢。スミスちゃんとガルシアも」

「おはよ~。てかこれアラーム必要だった?」

「マジそれ~三人共すぐ起きられててマジウケる~」

「ていうか食事時間が早くて良かったわ…就寝八時前とか大丈夫かしらとか思ったけど、」

「案外ぐっすり寝ちゃった…疲れてたかなあ」

「六時頃から〇時半で約六.五時間、ウィルソン達も〇時半から七時で同じ時間か…」

「まあでも気持ち六時間だよなあ。すげえ緊張の連続の後で寝たわけだし」

「三人共この後ぶっ続けで起きるんでしょ~? 大丈夫~?」

「まあ私は普段から早寝早起きだし、大丈夫だと思う。ガルシアは大丈夫そう?」

「大丈夫。陸上サークルの活動とかで普段から朝早いから」

「良かった。ブライアンは疲れ取れてる?」

「大丈夫。スミスは無理してない? もし眠たくなったら遠慮しないで言ってね」

「ありがとう」

「私夜遅くまで起きちゃうタイプだからマジこのタイミングで助かる~」

「私も私も。ウィルソンもだよね?」

「そうそう、でもさすがに今日はもう眠いかな…じゃあ私ウィルソン遠慮なくもう寝ますおやすみ~…」

「早。じゃ私ブラウンも寝ますおやすみい~、」

「二人共おやすみ~」

「お疲れ様…おやすみ、」

「そうそ、スミスちゃん達に一応。大方問題無かったけど、たまに食堂の方とか化粧室に人行ってて暫く騒がしかったかな。あとは他の寝室がちょっとうるさかったりしたくらい~」

「今は静かね。ありがとうミラー、ゆっくり休んで」

「いえいえどうもどうも、では私も寝ますすみい~、」

 ブライアンとスミスとガルシアと談笑しながら就寝の残り準備を終えたウィルソンとブラウンとミラーの三人が、ベッドに横になり。談笑スペースに向かった後半の見張り組三人が、座る場所を相談した上で、ソファ型にはスミス、一番大きいソファにはガルシア、二番目に大きい背もたれが背中までのソファにブライアンが座る。

 化粧室へ行く際は必ず二人組で行く事、食堂へ夜の軽食を取りに行く際も二人組で、基本的に医療の知識があるスミスは部屋に残る事と、決めていた事を再確認しながら。ウィルソン達がノートに書き残した事をスミスが読み上げ、ブライアンが別のノートに他の部屋の人達の様子を表形式でまとめていく。その間にも聴こえる物音や声の様子を、ガルシアがまた別のノートに書き記していく。

 ブライアンの持つペンが、表側からは部屋別の様子、裏側からは個人の様子をまとめる。自分が書いたノートをめくりながら、ブライアンがそれを念の為と言ってスミス達に見せた。

「私は基本居残りになるからガルシア、先に見て」

「ありがとうスミス。…ブライアン、学校でのノートもこんな感じなの?」

「うん、こんな感じ。わかりにくかったら言ってね」

「凄くわかりやすい。さすがIQが高いだけあると思う」

「ありがとう」

「ペンとノートは次以降の部屋に持って行っていいみたいだから、そのノートは持って行きたいわね」

「そうだね。小さいサイズのノートがあるから、こっちに書き写した方が持ち運びしやすいかな?」

「そうね。書き写すのは私がやるわ、部屋に残る時間が一番多いから」

「もうそのつもりかもだけど、良かったら、書き写すのは裏側からのものだけにして、部屋の様子はその人達の付随項目に入れていっちゃっていいよ」

「そうね。あとこれの後の他の人達の様子は、書き写しが終わったら順に入れていくわね」

「ありがとうスミス。お願いします」

「ありがと。そうなるとスミスが最終的に記録係になるのかな」

「そうね。皆に守られる立場になりやすいから、こういう方向で頑張るわ」

「頼りになります」

「本当に。さっそくだけど軽食取りに行こう、ブライアン」

「そうだね。食べ終わってる物もついでに持って行こっか。じゃ、スミス、行ってくるね」

「ええ。いってらっしゃい」

 

 

 

「食堂、まだ人いるね」

「そうだね。照明は暗くなってる。化粧室も少し暗いのかな」

「そうだね。…ブライアン、私の事怪しく感じたりしないの?」

「え? いや、」

「そう。割と態度に出やすいみたいだけど、気を付けた方がいいんじゃない。逆手に取られたりするよ、それ」

「あー、そうかも。でもまあ、私IQとか成績以外で目立った事無いから、そんなに問題無いよ。ありがとう」

「この殺し合いにおいては一番目立ってるけどね。食べる物だって皆から見られて、それ以外でも一挙一動。机を銃弾の盾にした時もだけど、四ヵ国語の件からさらに」

「まあ、それに気付かない程、鈍臭くはないよ。運動神経、普通だって嘘ついたけど、本当は割とできる。でも、自分より凄い人達いるかもって思って、ちょっと怖くなって謙遜しちゃって」

「…それ、黙ってた方が良かったんじゃない? 私相手でもさ」

「針山の上の道通る時に皆の運動神経わかったから、たぶん大丈夫。今の戸籍に9歳くらいから入っちゃった頃からもなんだけど、他人の嘘の言動にちょっと敏感で。その運動神経が本当かどうかもわかるから、問題無いよ」

「…そう、凄いんだね」

「あの学校の陸上サークル続けられてる方が凄いと思うよ。結構イジメ凄い場所だよね?」

「まあね。ああ、もしかして私の事、学生新聞で読んだ?」

「うん。州大会で優勝したけど、全国には怪我で行けなかったって写真付きで載ってたやつ。でも、写真のガルシアちゃん、怪我してる人の表情でもないし、怪我も無いみたいだったし」

「うん。先輩や他の人達には、たまたま優勝したのに全国までは無理ですって言って、その先の大会は先輩達に出てもらったんだよね。皆の目が怖かったから。皆私の事を先へ行く為の駒にしか見てないのもわかってたし、あんまり目立ったり空気読めてない子は虐められてるの知ってたからさ。家の事情もあったけど、その後のサークル活動は暫く休んでていいからお疲れ様って休まされて、結果全国大会は惨敗。頑張らなくて良かったって凄え思ったわ」

「怖いねえ」

「まあ、でもそれが普通の学校だったし。ブライアンは何かどういう所でも普通にしてそうだけど、そういうの無かったの?」

「あるにはあったけど、IQ以外で目立った事無いせいか、IQ高いのもあってか、私はそういうのに関わらなかったなあ。一応同じサークルの人達と一緒にいたり、家で習わされてるお稽古事もあって忙しかったのもあるかな」

「自分が虐める立場になったりはしなかったの?」

「聞く? うん、たまにこっそりやってはいたよ。でも皆やってるでしょ? 嫌いな人を一人だけハブにしたりとか」

「穏やかそうに笑いながら言うんだなあ。サイコパスなんじゃない、ブライアン」

サイコパスは美形なんでしょ? 私見た目モブいからなあ」

「へえ。でもこれ、アイプチでわざと目元変えてないか?」

「ルイス」

「昨夜ぶりね。寝れてる?」

「前半だけ寝かしてもらった。ボディーガード代わりに入れてくれた所がもう皆はしゃいだ後で寝ちゃってて。カードキーの部屋だから大丈夫だし」

「競争率高かった場所だね」

「ブライアン達は唯一の鍵部屋だったか」

「うん。皆こっちに敵意よりは生き残る為の見本として見てたし、カードキーで万が一開かなくなったら怖いなあって思って」

「怖い事言うなあ。部屋に戻る気が失せちゃうじゃないか」

「はは、ごめんごめん」

「ルイス達の部屋は黒が主体の部屋だっけ」

「ああ。インテリアが一番シックでクールだって皆言ってて。私は部屋が暗い時に視界が怖いなとは思ったんだが、まあ入れてくれるグループに感謝しているから。ガルシアは仲良くやってるみたいだな」

「幸運にもね。ツインテールと一緒だった時は皆遠巻きだったしちょっと怖かったけど、思ってたよりかは案外皆、私の事は疎ましく思ってなくて。肩は少しラクになったかな」

「良かったな。例のピンク色の部屋は夜半くらいからいきなり静かになったみたいだが、…騒ぎ過ぎて疲れたなら別にいいが、ちょっと不安だな」

「そうね。私達の部屋にも何かあるかもしれないし。そろそろ戻ろうか、ブライアン。話したり食事を一緒に囲む事があるとはいえ、ルイスとは別部屋のメンバーだから、誤解されても困るし」

「そうだね。じゃあね、ルイス」

「ああ。まあ、ブライアンは誤解されようがなさそうだがな」

「本当に。じゃ、ルイス。グッドラック」

「そっちも」

 

 

 

「おかえり、二人共。ああ、やっぱり夜食も同じ内容なのね」

「うん。夜食は市販の物だけだしちょっと安心するなあ」

「そうね。あ、さっきのルイスとの話、聞いてたわ。この部屋、配給扉のすぐ横だから筒漏れで。他の部屋の様子、元のノートと新しいノートに書いておいたから」

「ありがとう。ガルシア、スミスが部屋出る時はどっちかがこれ書く?」

「そうしよう。それにしても、夜食の中に甘い物もあるのはちょっと嬉しいかな」

「ふふ、そうね。これとか私は好きかな」

「私も。ブライアンは甘い物よりスナック系?」

「うん。特にこういうスティック系が好きかな。あ、明日の朝ご飯のメニュー表あるよ」

「本当? 見たい!」

「私も」

「五枚だから部屋の人数分かな、」

「ウィルソン達は朝起きだから、私達三人で一枚ずつでいいと思うわ。へえ、内容は普通そうね」

「相変わらず品数が多いけど、また毒入りだろうし…そう思うと気が滅入る」

「ふっ、そうよね。ああ、パンは朝も市販の物みたい」

「こっちの箱には明日…今日の休息時間スケジュールがある」

「これ、後でノートに写しておくわね。このメモの持参については何も見聞きしていないから」

「昼休憩あるんだね。今夜から明日の朝にかけての休息時間も長いけど、昨夜より少し短い。…これ、いつまで続くのかな。すぐに終わったらいいのに」

「本当に。4人までになったらさすがにすぐ終わるんだろうけど、4人以上の時の条件が全くわからないし、困ったわね」

「たぶんだけど、このままいくなら明日の午前で終わると思う」

「何でそう思うの?」

「お金のある人でも、毒入りもあるとはいえ、市販の物も入れた食事代とシャワーの水代を続けて注ぎ込む事はしないかなと思って。よっぽど奇特な人でない限りは。でも、そんな奇特な人ならもう少し時間をかけられる罠や流れにするだろうし」

「確かに時間をかけたくないような節はあるわね。最初の方でもいきなり10人減らそうとしてたし」

「建物も新しいし用意されたシャンプーとかも最近出た物もあったから、前々から考えられていた事でもなさそうだしね。それにしても、殺し合いさせたいような14歳の女子にこんなにお金かけるものなのかな。どう思う、ブライアン?」

「うん、それがわかんないんだよね。普通はお金かけないようにすると思う、殺し合いなんて事させるなら。それなのに新築とか新しい物、夕食のレトルトも市販には無い物があるって事は、相当潔癖だからこそだとは思うんだけど…どうでもいい相手だけなら潔癖症の人でもここまではやらない可能性のが高いから、たぶん捜したい人がいるって考えた方が自然ではあるんだけどなあ…」

「捜したい人…ね…」

「…ねえ、それ、もしかしたら、」

 スミスが手元のノート内のブライアンに関する欄に目を落とし、ガルシアがブライアンへ問いかけかけた時。遠くの部屋から悲鳴と鈍い物音が立て続けに鳴るのが聴こえた。

第一部「密室1日目」(対象…14歳のマリア名の少女、40名)〜『休息時間、二』

休息時間、二。

 

 

 

 真っ暗な室内で白テーブル前に座るメイド服の若い女性五人を、食事をする22人の少女を映す監視映像内の白い食堂の明かりが照らす。炭酸の泡が上へ昇る液体の入ったペットボトルを手に、肘をついたり白テーブル上に乗せられた白い箱の中に入れた少し小さい白枕に頭を乗せながら監視映像へ顔を向けるメイド達が、力の無い声を出しゲップを出し談笑する。

「いやーさっきのマジ水道代の無駄ですよねー」

「ゲップ。本当それですね」

「つか早く休憩時間来ないかな」

「ゲップ。本当それですね」

「執事側で一番料理が美味しい人達が作ってる夕食、私達一番最後かあ」

「ゲップ。本当それですね」

「待たせたわね、我が屋敷のメイド達」

「「「「「若奥様」」」」」

「私と彼女達の休憩時間が終わったから引き継ぎの後でたっぷり休憩して頂戴」

「「「「「承知致しました」」」」」

 引き継ぎ事項を済ませ軽やかに挨拶をしながら去っていく若いメイド達を、若メイド長と若いメイド三人が見送る。若奥様と呼ばれる金髪の女性が黒パンツスーツを纏う脚を組んで室内で一つだけのコウテイ型ソファへ腰掛け、若メイド長が室内へ入った直後にサイドテーブルへ用意していた色とりどりのペットボトル十本の内の一本に手を伸ばす。

「今の気分はこれね。他のペットボトルを」

「はい、クーラーボックスへしまっておきます。他の物が飲みたくなったらお声がけを」

「ええ。さて、毒で亡くなる子はいつ出るかしら~。あら、あのミルクベージュ髪の女の子、やっぱり中々ね。毒入りの物だけ残してるわ~まあ容姿はモブいけど」

「ブライアンでしたか。彼女の真似をしている少女は同じ物を残していますが、中には全部食べている子もいますね」

「あーあれ舌ピリピリするはずなのになあ」

「泣いてて気付かないみたいですね~」

「あ、全部食べない子もいますね~」

「まあシャワーの前にもシャワー室でもあんな事あったし、当然かあ」

「あー嫌だわコレ新しいからって手を付けたらハズレ引いたわ~」

「奥様。ご自身で選んだのですから、ちゃんと全部お飲み下さいね」

「あーもうわかったから睨まないで頂戴~さすがうちの若メイド長、守銭奴だわ~」

 

 

 

「げえ。コレ、舌ピリピリする。止めとこ」「こんなに品数あるのに~何かもう食べる気なくす…パンだけは大丈夫だって言って…」「私全部食べた…どうせもう死ぬんだし最後はお腹いっぱいになりたい…」「うわお前マジ予備軍死んでも知らねえぞ」

 レトルトパックの品名と裏の印刷文字を全て見てからパックの口を開け中身を一、二秒確認しニオイを嗅いだ後で自身の口へ運んで口に含んでから、ゆっくり咀嚼、それから普通に食事。

 一パックずつその行為を繰り返すブライアン、彼女と同じ食べ方をするスミスに、あまり食事の進まないウィルソンとブラウンとミラー、そしてルイス。彼女達がいるテーブルの様子を、十人程で食事を囲むグループがチラチラと窺う。十人に混ざり食事をするガルシアも、ブライアンが食べた物から手を付けていく。

 ブライアンが「あ、これ美味しい」と頬を少し緩め、レトルトパックの裏に印刷された市場の物より事細かく説明されている原材料名の下にある原材料名一つ一つの生産地に目を通す。十人程で食事を囲む少女達を背にブライアンの向かいの席に座るウィルソンとブラウンが、肘をつき頬杖をつき、レトルトパックを力無く手にしながら苦笑する。

「ブライアン嬢、余裕だなあ」

「ね。私らもう警戒し過ぎて味がよくわかんなくなってきたよ」

「それそれ。ミラー、食べてる?」

「あーまあ、うん…でも、トマトのは今夜は無理かなあ。まあ明日の朝もトマトのメニュー出るかわかんないけど…」

「あんな事が起こるってわかってて赤いメニュー出すとか、あの白仮面共どんなドSだよ」

「それなー。スミスちゃんは割と食べられてるね?」

「ええ、そうね。裏の項目にわざわざ毒とか書いてるのもあるし、ブライアンも教えてくれるし。ブライアンやルイスは嗅覚や味覚が鋭いから、頼りになるわ」

「はは。でも私が気付かないで食べちゃう可能性もあるし、私が無理でも大丈夫な人もいるかもだけど…」

「でもアレルギー無いんでしょう? だったら大丈夫よ。ブライアンの苦手な物が味の濃い物と甘過ぎる物だから、その二つはわからないけど」

「それな。デザートまであるのに、どうなるかわかんない物に手付けるのはなあ…」

「怖いよねえ。まあ、でも他の子の中にデザート食べて具合悪くなってる子いないみたいだし、デザートは大丈夫なんじゃない? あとパン」

「あーパンは市販に出てるのと同じだもんなあ」

「そうだよね…コレ市販のあの有名なやつと同じだもんね…中身がすり替えられてなければ…」

「怖い事言うなよミラー。ニオイも全然大丈夫だって、ルイスも言ってんじゃん」

「ああ。うちの家、毒物とか平気で売る店も近くにあるからもう色々嗅ぎ分けられてしまってなあ。口に入れる前にわかる」

「すげえ怖い所に住んでんだなあ。よく生き残れたな? いや、ここでじゃなくてルイスの家の近所の話」

「まあ、私も小さい頃から怯えてはいたけど、慣れたり大きくなるにつれて恐怖よりも安全圏を歩く為の確認作業の方で気を取られやすくはなったな。それに近所から離れてそれこそ学校の近くとか街中に行けば、安全な食料も買えるし安全な食事もできるし」

「マジやべえ。あ、ブライアンもうお腹いっぱい?」

「うん。あんまり食べて安心し過ぎるのも怖くて…あ、ごめん何か不安にさせるような事…」

「いやいいよ、皆そうだしな」

「そうそう、本当の事だし。そういえば朝にシャワー浴びても良いとか書いてたけど、どうする~? スミスちゃん浴びるう?」

「そうね…寝る部屋に何か変なニオイが流されたら嫌だし、一応浴びていきたいけど…」

「まあそれだよなあ。寝室に何もしないとも書いてないしなあ」

「そうだよねえ。でも私も朝のシャワー浴びたいなあ。けどあのシャワー室見た後だと他のシャワー室もちょっと怖く感じる…」

「一番端のシャワー室で良かったわよね」

「スミスちゃん度胸あるなあ。言いながらパン食べるとか」

「今の内に大丈夫な物あるだけ食べておかないと、明日の朝ご飯がどういう物かわからないし」

「まあ確かになあ。食事の時間はゆっくりでいいみたいだし、私も食べるかな…」

「私も頑張って食べよ。これが最後の晩餐かもしれないし…」

「だよなあ。いやでも生き残れるだろ、四人以上でも良いんだもんな? 頑張れば大丈夫だって。IQ少女に医者の娘がついてるんだから」

「それもそうだね…うん、ちょっと食欲出てきた。食べる~」

「ミラー、大丈夫そ?」

「うん、皆の話聞いてたら…それに食事時間30分だし、今の内に食べちゃう」

「まあ無理はするなよ~」

「私これ返却扉に持ってくね」

「いってら~。…にしても、ブライアンすげえなあ」

「それね~。IQ高いだけじゃなくて毒見もできるとか…」

「まあ本人は危なそうとかちょっと曖昧な感じだったけど、言ってる通り舌ピリピリするのとかその中にあったしねえ」

「勉強になるわ」

「医者って毒見必要だっけ?」

 返却扉の中に食事済のトレイごと入れると、重い音の後にスライド音と稼働音が聴こえ、音が止まってから開くと中が空っぽになっていた。ブライアンが空っぽになったのを確認し目を瞬かせ扉を閉めると「ブライアン、」と後ろから声を掛けられる。彼女が声の持ち主を見ると、ブルネットの巻き髪が緩いウェーブになったガルシアが食事済のトレイを持って立っていた。

「この後でちょっと二人きりで話したいんだけど…いい?」

 

 

 

 人のいない白く明るい化粧室。ジョーンズの亡骸があるシャワー室の方向と反対側の長椅子の端にガルシアが座り、隣にブライアンが座った。食堂への扉横の貼り紙を正面に座ったガルシアが、ブライアンに向かい合い「あの、相談なんだけど、」と声をひそめ言う。

「もし良ければ同じ部屋で寝ない? ジョーンズがいなくなった後で急に頼むのも何だけど…」

「あー、その…。ウィルソン達に聞かないとわからないかな…私一人で使うわけじゃないから…」

「そっか、」

「ご、ごめん」

「いや、わかりきってる事だし。あ、でもそうなるとルイスは?」

「ルイスからも同じ事聞かれたんだけど、ウィルソン達に断られちゃって…ルイスが銃二つ持ってるからって皆言ってたけど、どうも理由が違うような、あっいや何ていうか、」

「私も二丁銃持ってる。まあ今は回収されちゃってるけど」

「そうなんだ。まあ私一人じゃ判断できない事だし、良かったらウィルソン達呼んでくるか彼女達に聞いてくるけど」

「いや、」

「あ、いたいたブライアン嬢」

「あ、ガルシアちゃんも一緒? 何二人して密会ですか~」

「ウィルソン、ブラウン。…どうする? ガルシア」

「ああ、もしかして一緒の部屋で寝たいとか? だってさ、ウィルソン。どうする?」

「あーまあ、ガルシアならルイスよりいいけどな~…」

「もし六人以上で寝る事で何か起こったら怖いからねえ」

「二人共、マジそれな…」

「ミラー。食べ終わったの? スミスちゃんも」

「うん…ちょっと食べた気しないけどあれ以上食べるのも難しかったから…」

「早食いして具合悪くなっても困るしね。…貴女、ガルシアよね。どうしたの? ブライアンと二人で」

「同じ部屋がいいんだと」

「あー、まあ、6人までなら大丈夫よね」

「え、そうなんスミス?」

「ええ。寝室に入ってすぐある扉の横にある壁の注意事項にあったわ。6人まで可、7人以上は不可、ってハッキリ」

「あんなビッシリ長いの全部読んだの?」

「さっすが~」

「見逃して何かあったら困るからね。ブライアンも読んだでしょう? だからガルシアだけ入れましょう」

「OK、あーでもルイスにどう言う?」

「ルイスは放っておいても大丈夫だろ。黒人だけあって空気読んでるし」

「まあ他の子達がボディーガード代わりに入れてくれるかもだしね~」

「だってさ、ガルシア」

「ありがとう…一人で食堂とかに残って何かあったらどうしようって凄く怖かったから、」

「まあ寝室で何も起こらないって保証も無いけどね」

「ね~、それね」

「シビアですなあ、スミスちゃん。でもそうだよね…シャワー室でもね…」

「まああれは注意書きちゃんと読まなかったジョーンズが悪いだろ。他の皆はちゃんと見てたし」

「そうね。寝室がどれくらいの広さかわからないけど、まあ二人で一つのベッドなら大丈夫じゃない?」

「そうだね~。私とスミスちゃんが同じベッドでも良いよね~」

「ちょっと、ミラー」

「その事だけど、長椅子かソファでもあれば、私はそっちで寝るから。皆はベッドで寝て」

「え~、でも悪いよ~」

「急にグループの中に入れてほしいって言ったのは私だし。そうさせて」

「まあベッドによっては三人で寝るのもあるかもだし、入ってから決めても遅くないよお」

「そうだな。それにガルシアって私達側の人間だし。一緒に寝ようぜ~」

「うわっ、ちょっとウィルソン、…ありがと、」

「いいっていいって。あー、にしても、こんな状況じゃなかったら夜通しで恋バナとかお菓子食べたりとかするのにな~」

「あ~それね~」

「ここ無事に出られたら皆で集まらない?」

「賛成~! 誰の家にする? それとも年齢詐称してホテル行っちゃう?」

「スミスちゃんの家は? 医者の家なんだし一番広いんじゃね?」

「あーうちの家厳しいから、他の人の家じゃないと無理そう」

「あーそっかー。ブライアンの家は?」

「あ…うちちょっと家族仲あんまり良くなくて…」

「へ~、うちも家族仲良くないんだよなあ。たまにガラス割ったりとか日常茶飯事でさあ~」

「ガラス割るとかちょっとヤバいでしょ~」

「まあここ出てから決めようよ。それより食事時間もうすぐ終わるよ!」

「寝室入れるんだよね。どの寝室にする?」

「つっても早い者勝ちなんだろ? 何かすげえピンクの部屋とかあったけどあのグループが狙ってるから無理そうだしなあ」

「そうよね、諍いあって寝てる内に狙われても困るし」

「まあ鍵かければ大丈夫、ああでもピッキングできる子いるかあ」

「そしたら交替で不寝番する?」

「ぜってえ寝る自信あるわ」

「それな」

「あ、二人ずつはどう? もしくは三人」

「三人ずつなら誰か寝ちゃっても大丈夫そうね。ブライアン、いい?」

「うん、大丈夫」

「じゃ、あれで決めようよ」

「オッケー。それじゃ、」

「「「「「「いっせーのーせ、」」」」」」

第一部「密室1日目」(対象…14歳のマリア名の少女、40名)〜『休息時間、一』

休息時間、一。

 

 

 

「このホテル本当良いな」

「うん…全部私の趣味で造らせてる」

「知ってはいたが何かここでそれ言われるとちょっと気持ち悪くなるからやめてくんね?」

「全部私の趣味…」

「やめろよ、つかまさかあのファンシーな二層階もお前の趣味?」

「ダメ?」

「いやいいけど、んで仕事の話なんだが、」

「あー例のRANちゃんの件とその関係ね」

「さっき地下のカジノで聞いた話だとRANちゃんが請け負った仕事で別の家の人間としてスパイしてるみたいで」

「へえ」

「お前神妙な面持ちで盛り盛りのパフェ食うなよ、んで仕事中のその子からの情報発信とその子の両親とその部下の調査、っつーより内容が娘のストーカーだったけどその調査で社会的不都合が多かったから、周りの人間含めて消せるだけ消して連鎖起こしつつ実験と外からの人間用のエリアと住居拡大してってるらしい」

「あ~地図外の人達ね、まあ私達も地図外出身だけどまあ原始人みたいな猿文化の奴らとはかけ離れてはいるよね」

「んな可愛いパフェ食べながら言う事辛辣だよなまあ本当の事だけどよ、で、アメリカとその他複数国を寝床にしてこの西暦世界地図内のエリア割と開拓調査していってるだろ?」

「始まりはこのエリアが戦争真っ只中だったよねえ、それが今ではこんなに平和になって、」

「もうちょい科学進歩させつつ不作地域の雑草焼き払って土壌良くしたら俺達のこのエリアでの仕事は終わりらしい」

「で、それがちょっと曖昧な言い方だったと」

「そう! 凄え曖昧でこっちの事顎で使う気満々の奴らがいてよ、」

「それで今日ちょっとイライラしてるんだね、パフェ食べる?」

「いやいい、酒一つ追加で」

「明日もまだこの件で情報収集と会議なんでしょ?」

「お前も会議出るのに何か他人事じゃね?」

「え~とりあえず私パフェ追加したいからお酒一緒に頼む?」

「頼む」

「うん、一杯奢るよ」

「そう言ってホテル内での利用費全部払うんだろ」

「君もしてくれてるじゃん。宣伝料の方が大きいし情報交換相手もお金落としていってくれるからね」

「まあな。くっそ、カクテルとつまむもの欲しい」

「最近できた新メニューと一緒に好きな物頼んであげる」

「あー新メニューの意見欲しいのな、わかったわかった、」

 

 

 

 壁二面の硝子窓越しの高い濃緑の樹木林と砂色の大地を、白く輝く太陽光が空と共に朱に染める。太陽光を浴びて朱に染まる白肌色のジェンガティラノサウルスの姿を形作り、その横を通り過ぎたもこもこ白パジャマ姿の社長が白タオルを肩に掛け窓硝子の前に立つ。スーツ姿時よりも一回り大きく見せる白熊のパジャマ姿が夕陽で眩しい硝子に映る。

「ふう…私、美しい…」

「社長がお美しいのは承知していますから、この案件だけでも今日中に終わらせて下さい、髪乾かした後でいいんで」

「美しい私の美人秘書は今日も優秀だね。仕事の前後でアイス食べていい? CMに出てたやつ食べたい」

「食べ過ぎないで下さいね」

「え~それはそうとこのパジャマどう?」

「何でそのチョイスなのかが謎です」

「クリスマス近いからトナカイにちょっと浮気しかけたんだけど、ほら私ってトナカイにソリで罪人轢かせる側だからさあ、あとパジャマはやっぱり白だよねあっ入口でやっぱりつかえる、」

「ご自分で何とかして下さい私は残りの仕事終わらせてアフターファイブをゆっくり過ごします」

「あー待って入る時は大丈夫だったんだけど、ねえ誰か人呼んできて~!」

 

 

 

 白い照明が真っ白な室内を明るく照らす。電子レンジの高い音がいくつも鳴り、扉を開閉する音と衣擦れの音や若い男女の声が談笑する声作業する音が、白く簡素で無機質な室内を賑やかにする。二種類以上のレトルトパックやパンの入った袋を次々と食事用トレイ上に乗せテーブル上をスライドさせていく手が全て水色のビニール手袋の上に透明な手袋を着けている。

 ゴムでしぼられた白帽子に白マスクと上下に分かれた白作業服、の上に同じ形状のビニールの帽子とマスクと作業服に加え透明ゴーグルも着けた若い男女達が、二色の手袋を重ね着けて流れ作業する、室内の壁のスクリーンに。黒スーツ姿の金髪の女性と黒スーツの黒髪の男性の姿を映した。

「若奥様」「若旦那様」

『私のメイド、執事、お疲れ様です。夕食運びの作業が終わり次第、男性陣全員は私達の夕食の準備にとりかかって頂戴。女性陣はシフト通り交代しながら再び監視をお願いするわ』

「「「「「承知致しました」」」」」

「ていうか奥様また変な曲流してません~?」

「これもあの聖なるおかしな女の事を歌った曲ですよね」

「こっちの曲はマリア連呼じゃないですよねえ」

「作者不明とか怪し過ぎですね」

「まあでも暗号で解くと中傷の言葉にしか聞こえませんけど実際はどうなんですかね」

「まあいいじゃないですか公式のは全部あの女の歌って事になってるんですから」

「それもそうね…」

「ていうか処女懐胎とかマジ怖えマジUMA過ぎる怖え」

「男にとってはマジ異生物にしか感じられないよな…」

「いや女にとってもですけど?」

「そうよそうよマジUMA過ぎてホラーよ」

「にしてもこれレトルトパック多過ぎない? こんなに食べられないわよ勿体ない」

「食べて死ぬような物もあるじゃない」

「確かに」

「全部食べて生き残ったらマジUMAよね」

「それ~」

 

 

 

 手前に更衣室のある一人用シャワー室が十室並ぶ明るい白通路へ出たブライアンが、白タオルを頭に巻いて髪をタオル内にしまった状態で、隣の部屋から出たルイスと合流する。続けて二人の隣室から出たガルシアが、首からかけたバスタオルに髪から温かい水滴を垂らし、二人の様子を髪を拭くバスタオル越しに見ながら、先を歩く二人に続いて更衣室前の短く白い通路を進み白通路中央の前で止まる。

 「化粧室」と書かれた扉のドアノブ上にあるカードキーへ、白通路へ辿り着いた時に横壁から出て手に入れたカードを入れる。彼女が扉を開けた先には、ドライヤーとブラシと櫛がサイドに置かれた洗面台が十並ぶ、教室一部屋分程の広さの、白く明るい簡素なインテリアの部屋があった。扉から向かって正面には洗面台エリア、右側奥に明るく細長い通路が続き、左側奥の壁には「食堂」と書かれた扉がある。

 食堂の扉にカードキーが無い事を視界に入れたガルシアが、扉横にある貼り紙に「レスト時間15分経過後、食堂への扉の開閉が可能になります」と印刷された文下の朝までのスケジュールと注意書きを見ていると。出てきた扉側の壁越しに「ねえガルシアちゃん~、」と間延びしたジョーンズの声が、彼女に声をかけた。

「そんなに速く浴びなくてもシャワー時間まだあと二十分あるよ~? 後から来た六人もまだ浴びてるし~」

「ちょっと先に室内見ておきたいから。ジョーンズはゆっくり浴びてて」

「りょ~かい~。あー、ってかこのシャンプー良い匂いするう。自分が使ってるシャンプーあれば良かったけどこれは割と良い方かな~」

「へえ。後で使ったシャンプー教えてよ」

「いいよ~。ガルシアちゃんのも教えて~、あーマジあったかいお湯が沁みるう~、」

 奥に続く通路から「トイレだったね」と言いながら出てきたブライアンとルイスが、洗面台前の椅子に座ってドライヤーをかける。化粧室内の時計の針が示す、レスト時間開始から14分経過頃。髪を乾かし終えた二人がシャワー室側に並べられた長椅子に座り、白通路からカードキーで入ってきた四、五人と談笑する。

「やっぱりちょっと落ち着かなくてさ~、早めに浴び終わっちゃった」「だよねえ」「ていうかさっきの通路に入る前の二人ずつしか入れない待機室さあ、ちょっと暗かったよねえ」「省エネじゃない?」「でもあの部屋で待たされるのちょっと怖いよねえ」「わかる~。しかも次に入る順番で若干取り合いになったし」

 レスト時間開始から15分経過後、食堂への扉がロック解除音を出した。手前で待機していたブライアンとルイスとガルシアが、ブライアンを真ん中、ルイスを先頭に、食堂への扉を開く。扉を開くと、物音一つしない、白い照明光が照らす明るい教室大の部屋へ出た。

 食堂中央には、白い横長テーブルと白長椅子が並べられ。左側の壁には、「配給扉」の表示カードを掲げる食事用プレート大の白扉が奥側に十、手前側には「返却扉」の表示カードを掲げる白扉が十並び。食卓の向こうにある正面には、「寝室」の表示カードを掲げる扉が四。右側の壁には、左側を広い白壁のままに、右側奥に「EXIT」の文字が入る一つの灰色の扉があった。

「…とりあえず、ここで殺される事は無さそうだね」

「そうだな。だが部屋が四つしかないぞ。5人部屋なんだよな?」

「余った人は他の部屋に入れるのかな。中、見れるなら見ておきたいな。食事時間まであと15分だし」

「そうだな。…貴女も一緒に見るか?」

「いえ。私は別で行動しておくわ。一緒に来たツインテールの子がまだ来ないし」

 ルイスがガルシアに「OK、」と苦笑し、ガルシアへ微笑して手を小さく振り去るブライアンに続き寝室へ向かった。

 20分経過頃には10人程食堂へ入り、25分頃には20人程が食堂で寛いでいた。25分経過後、一人で配給扉と返却扉間の給水器から水を汲んだ少女が「そういえば」と隣の少女二人へ話しかける。

「さっき25人から23人に減ったよね。まだ3人来てないけど」「まだ浴びてんじゃない? こんな所でそんなに長く浴びても怖いだけじゃん、何か見た目は新しいけどさあ」「マジそれ。てか例のツインテールいないけど、その浴びてる中にいんのかなあ」「巻き髪の子と一緒にいた女?」「そー。何かこっちの事すげえ見下してた女」「マジむかつくよねアイツ。この歳であの髪にしてる時点ですげえキモいのに。てか何か巻き髪の子にすげー媚びてなかった?」「あー、ね」「まあこのまま閉じ込められていなくなるならいいよねえ」「それな」

 ガルシアが少女三人の声を後ろに化粧室の扉を開けると、二人の少女が髪を乾かしているのが彼女の視界に入った。プラチナブロンドではない二人から視線を外し、カードキーを入れてからシャワー室へ続く白通路へ入る。

 白通路への扉を開いて正面にある、暗い通路側から白通路へ入ってきた白扉が、灰色の扉にすり替わり、灰色の扉にEXITの文字が無い事を一目見て確認した後。シャワーの流水音がまだ響く一室へ「ジョーンズ?」と声をかけた。ノックをしても返事の無いその一室へ拳を作った手でドンドン音を鳴らすが、シャワー以外の音も声も無い。化粧室の扉が開き、十人程の少女達が入ってくる。

「何、やっぱあのツインテールいないんじゃん?」「やっぱり何かシャワー室に仕掛けられてたんじゃない?」「うわあ…早めに出て良かった~…」「ねえ、アンタと一緒にいたツインの女が入ってたの、もしかしてその部屋?」

「ええ。例のIQ少女と黒人の次に私達二人が入ったんだけど…」

「え~、最初からずっと?」「さっき声かけてたけど何も返事無いんでしょ? ヤバくね?」「だよねえ。ねえ、これ開けられるのかな」「開けてどうすんの~、死体あったらどうすんの~!」「でも開けないとわかんないじゃん。何でダメになったのかも知っておきたくない?」「あーそれ、」

「なあ、何かあったの?」

「あ、ウィルソンちゃんとブラウンちゃん~」「それがさー、巻き髪の子と一緒にいたツインテールがまだ浴びてるみたいでー」「何かノックしても声かけても全然返事無いんだってさあ」「食事時間まであと3分だけど」「えーじゃあもう行く?」「だねー」

 ウィルソンとブラウン達の前に入ってきた十人程の少女がその場を去ろうとした時、『利用可能限界時間を超えました。シャワーを自動停止致します』と機械音声が言葉を紡いだ。シャワーの音が止まり、水滴が落ちる音が更衣室向こうで響く。

 ガルシアがジョーンズの姓を呼ぶが返事も無く、ウィルソン達の前に入った十人程の内の一人が「私ピッキングできるよお」と言い、ポケットから出したアメピンで更衣室の扉の鍵を開けた。開けた更衣室内には誰もおらず、籠の中には脱ぎ捨てられたジョーンズの服と赤いハートのストラップ付きの小型拳銃があった。

 鍵の無いシャワー室へ続く白扉を開けた瞬間、先頭のガルシアが小さく高い悲鳴をあげた。彼女の後ろにいた少女達が、青ざめた顔で更衣室の壁に背をつくガルシアの前を抜け、シャワー室への扉を大きく開く。

「うっわ、…裸じゃないだけまだマシ?」「つかまだ血出てんじゃん」「ツインテールの体隠してるこれ、何か書いてある」「何て?」

 濡れたプラチナブロンドの髪の下で白目を剥いたジョーンズの口が、力無く開けられ。彼女の首から下を、台形型の灰色の金属が包み隠す。鉄製のそれに彫られている文を、一人の少女が読み上げる。

「“更衣室内の貼り紙にもある、シャワー利用制限時間25分を経過した場合。頭の無い鉄の処女の刑に下す”」

 ジョーンズの体を包む頭の無い鉄の処女の下から滴る赤い液体が、シャワー室の床の排水口へと流れていく。

 

 

 

 ~ 残り人数、…22。 ~