【 AIRAM 〜アイ・ラム〜 】(第一部小説執筆中)

オリジナル小説【AIRAM】。「アルファポリス」で執筆中公開中のものをこちらでも。追加入力&修正中ですがよろしければアルファポリスでもお気に入り等よろしくお願いします。

第一部「密室1日目」(対象…14歳のマリア名の少女、40名)〜『休息時間、三』

休息時間、三。

 

 

 

 教室大の半分程の広さの、白と薄緑の色で全てのインテリアが揃えられた寝室内。簡素な脚付きマットレスベッドの、日本でいうセミダブルサイズが二、シングルサイズが二、背もたれ付きソファ型のセミシングルサイズが一。計五台のベッドの内ソファ型以外が、横一列に人一人分のみの間隔を空けて並べられ。残るソファ型は、室内角にある簡素なソファ二つと膝丈テーブル一台のある談話スペースの一部になるように設置されている。

 ソファ型ベッドにはウィルソンとブラウンが寛いで座り、唯一背もたれが頭部まである一人がけソファにはミラーが座っている。三人がテーブルに広げられたポテトチップスのパーティー開きの袋や500mlペットボトルのコーラに手を伸ばし、声量を抑えて談笑し、時々聴こえる物音や声の後でテーブル上のノートにペンを走らせる。

 寝室のインテリアの色と同色の壁掛け時計の針が、〇時半を示した時。小さな電子アラーム音が鳴り。アラーム音が三度目のループに入るタイミングで、ベッド側の壁に置かれたサイドテーブル上のアラームへ歩み寄ったブライアンがアラームを止めた。アラーム上のボタンから手を離したブライアンが少しぼやけた声と目で談話スペースの三人に振り返る。

「おはよう~。お疲れ様、三人共」

「いえいえ。はざっす、ブライアン嬢。スミスちゃんとガルシアも」

「おはよ~。てかこれアラーム必要だった?」

「マジそれ~三人共すぐ起きられててマジウケる~」

「ていうか食事時間が早くて良かったわ…就寝八時前とか大丈夫かしらとか思ったけど、」

「案外ぐっすり寝ちゃった…疲れてたかなあ」

「六時頃から〇時半で約六.五時間、ウィルソン達も〇時半から七時で同じ時間か…」

「まあでも気持ち六時間だよなあ。すげえ緊張の連続の後で寝たわけだし」

「三人共この後ぶっ続けで起きるんでしょ~? 大丈夫~?」

「まあ私は普段から早寝早起きだし、大丈夫だと思う。ガルシアは大丈夫そう?」

「大丈夫。陸上サークルの活動とかで普段から朝早いから」

「良かった。ブライアンは疲れ取れてる?」

「大丈夫。スミスは無理してない? もし眠たくなったら遠慮しないで言ってね」

「ありがとう」

「私夜遅くまで起きちゃうタイプだからマジこのタイミングで助かる~」

「私も私も。ウィルソンもだよね?」

「そうそう、でもさすがに今日はもう眠いかな…じゃあ私ウィルソン遠慮なくもう寝ますおやすみ~…」

「早。じゃ私ブラウンも寝ますおやすみい~、」

「二人共おやすみ~」

「お疲れ様…おやすみ、」

「そうそ、スミスちゃん達に一応。大方問題無かったけど、たまに食堂の方とか化粧室に人行ってて暫く騒がしかったかな。あとは他の寝室がちょっとうるさかったりしたくらい~」

「今は静かね。ありがとうミラー、ゆっくり休んで」

「いえいえどうもどうも、では私も寝ますすみい~、」

 ブライアンとスミスとガルシアと談笑しながら就寝の残り準備を終えたウィルソンとブラウンとミラーの三人が、ベッドに横になり。談笑スペースに向かった後半の見張り組三人が、座る場所を相談した上で、ソファ型にはスミス、一番大きいソファにはガルシア、二番目に大きい背もたれが背中までのソファにブライアンが座る。

 化粧室へ行く際は必ず二人組で行く事、食堂へ夜の軽食を取りに行く際も二人組で、基本的に医療の知識があるスミスは部屋に残る事と、決めていた事を再確認しながら。ウィルソン達がノートに書き残した事をスミスが読み上げ、ブライアンが別のノートに他の部屋の人達の様子を表形式でまとめていく。その間にも聴こえる物音や声の様子を、ガルシアがまた別のノートに書き記していく。

 ブライアンの持つペンが、表側からは部屋別の様子、裏側からは個人の様子をまとめる。自分が書いたノートをめくりながら、ブライアンがそれを念の為と言ってスミス達に見せた。

「私は基本居残りになるからガルシア、先に見て」

「ありがとうスミス。…ブライアン、学校でのノートもこんな感じなの?」

「うん、こんな感じ。わかりにくかったら言ってね」

「凄くわかりやすい。さすがIQが高いだけあると思う」

「ありがとう」

「ペンとノートは次以降の部屋に持って行っていいみたいだから、そのノートは持って行きたいわね」

「そうだね。小さいサイズのノートがあるから、こっちに書き写した方が持ち運びしやすいかな?」

「そうね。書き写すのは私がやるわ、部屋に残る時間が一番多いから」

「もうそのつもりかもだけど、良かったら、書き写すのは裏側からのものだけにして、部屋の様子はその人達の付随項目に入れていっちゃっていいよ」

「そうね。あとこれの後の他の人達の様子は、書き写しが終わったら順に入れていくわね」

「ありがとうスミス。お願いします」

「ありがと。そうなるとスミスが最終的に記録係になるのかな」

「そうね。皆に守られる立場になりやすいから、こういう方向で頑張るわ」

「頼りになります」

「本当に。さっそくだけど軽食取りに行こう、ブライアン」

「そうだね。食べ終わってる物もついでに持って行こっか。じゃ、スミス、行ってくるね」

「ええ。いってらっしゃい」

 

 

 

「食堂、まだ人いるね」

「そうだね。照明は暗くなってる。化粧室も少し暗いのかな」

「そうだね。…ブライアン、私の事怪しく感じたりしないの?」

「え? いや、」

「そう。割と態度に出やすいみたいだけど、気を付けた方がいいんじゃない。逆手に取られたりするよ、それ」

「あー、そうかも。でもまあ、私IQとか成績以外で目立った事無いから、そんなに問題無いよ。ありがとう」

「この殺し合いにおいては一番目立ってるけどね。食べる物だって皆から見られて、それ以外でも一挙一動。机を銃弾の盾にした時もだけど、四ヵ国語の件からさらに」

「まあ、それに気付かない程、鈍臭くはないよ。運動神経、普通だって嘘ついたけど、本当は割とできる。でも、自分より凄い人達いるかもって思って、ちょっと怖くなって謙遜しちゃって」

「…それ、黙ってた方が良かったんじゃない? 私相手でもさ」

「針山の上の道通る時に皆の運動神経わかったから、たぶん大丈夫。今の戸籍に9歳くらいから入っちゃった頃からもなんだけど、他人の嘘の言動にちょっと敏感で。その運動神経が本当かどうかもわかるから、問題無いよ」

「…そう、凄いんだね」

「あの学校の陸上サークル続けられてる方が凄いと思うよ。結構イジメ凄い場所だよね?」

「まあね。ああ、もしかして私の事、学生新聞で読んだ?」

「うん。州大会で優勝したけど、全国には怪我で行けなかったって写真付きで載ってたやつ。でも、写真のガルシアちゃん、怪我してる人の表情でもないし、怪我も無いみたいだったし」

「うん。先輩や他の人達には、たまたま優勝したのに全国までは無理ですって言って、その先の大会は先輩達に出てもらったんだよね。皆の目が怖かったから。皆私の事を先へ行く為の駒にしか見てないのもわかってたし、あんまり目立ったり空気読めてない子は虐められてるの知ってたからさ。家の事情もあったけど、その後のサークル活動は暫く休んでていいからお疲れ様って休まされて、結果全国大会は惨敗。頑張らなくて良かったって凄え思ったわ」

「怖いねえ」

「まあ、でもそれが普通の学校だったし。ブライアンは何かどういう所でも普通にしてそうだけど、そういうの無かったの?」

「あるにはあったけど、IQ以外で目立った事無いせいか、IQ高いのもあってか、私はそういうのに関わらなかったなあ。一応同じサークルの人達と一緒にいたり、家で習わされてるお稽古事もあって忙しかったのもあるかな」

「自分が虐める立場になったりはしなかったの?」

「聞く? うん、たまにこっそりやってはいたよ。でも皆やってるでしょ? 嫌いな人を一人だけハブにしたりとか」

「穏やかそうに笑いながら言うんだなあ。サイコパスなんじゃない、ブライアン」

サイコパスは美形なんでしょ? 私見た目モブいからなあ」

「へえ。でもこれ、アイプチでわざと目元変えてないか?」

「ルイス」

「昨夜ぶりね。寝れてる?」

「前半だけ寝かしてもらった。ボディーガード代わりに入れてくれた所がもう皆はしゃいだ後で寝ちゃってて。カードキーの部屋だから大丈夫だし」

「競争率高かった場所だね」

「ブライアン達は唯一の鍵部屋だったか」

「うん。皆こっちに敵意よりは生き残る為の見本として見てたし、カードキーで万が一開かなくなったら怖いなあって思って」

「怖い事言うなあ。部屋に戻る気が失せちゃうじゃないか」

「はは、ごめんごめん」

「ルイス達の部屋は黒が主体の部屋だっけ」

「ああ。インテリアが一番シックでクールだって皆言ってて。私は部屋が暗い時に視界が怖いなとは思ったんだが、まあ入れてくれるグループに感謝しているから。ガルシアは仲良くやってるみたいだな」

「幸運にもね。ツインテールと一緒だった時は皆遠巻きだったしちょっと怖かったけど、思ってたよりかは案外皆、私の事は疎ましく思ってなくて。肩は少しラクになったかな」

「良かったな。例のピンク色の部屋は夜半くらいからいきなり静かになったみたいだが、…騒ぎ過ぎて疲れたなら別にいいが、ちょっと不安だな」

「そうね。私達の部屋にも何かあるかもしれないし。そろそろ戻ろうか、ブライアン。話したり食事を一緒に囲む事があるとはいえ、ルイスとは別部屋のメンバーだから、誤解されても困るし」

「そうだね。じゃあね、ルイス」

「ああ。まあ、ブライアンは誤解されようがなさそうだがな」

「本当に。じゃ、ルイス。グッドラック」

「そっちも」

 

 

 

「おかえり、二人共。ああ、やっぱり夜食も同じ内容なのね」

「うん。夜食は市販の物だけだしちょっと安心するなあ」

「そうね。あ、さっきのルイスとの話、聞いてたわ。この部屋、配給扉のすぐ横だから筒漏れで。他の部屋の様子、元のノートと新しいノートに書いておいたから」

「ありがとう。ガルシア、スミスが部屋出る時はどっちかがこれ書く?」

「そうしよう。それにしても、夜食の中に甘い物もあるのはちょっと嬉しいかな」

「ふふ、そうね。これとか私は好きかな」

「私も。ブライアンは甘い物よりスナック系?」

「うん。特にこういうスティック系が好きかな。あ、明日の朝ご飯のメニュー表あるよ」

「本当? 見たい!」

「私も」

「五枚だから部屋の人数分かな、」

「ウィルソン達は朝起きだから、私達三人で一枚ずつでいいと思うわ。へえ、内容は普通そうね」

「相変わらず品数が多いけど、また毒入りだろうし…そう思うと気が滅入る」

「ふっ、そうよね。ああ、パンは朝も市販の物みたい」

「こっちの箱には明日…今日の休息時間スケジュールがある」

「これ、後でノートに写しておくわね。このメモの持参については何も見聞きしていないから」

「昼休憩あるんだね。今夜から明日の朝にかけての休息時間も長いけど、昨夜より少し短い。…これ、いつまで続くのかな。すぐに終わったらいいのに」

「本当に。4人までになったらさすがにすぐ終わるんだろうけど、4人以上の時の条件が全くわからないし、困ったわね」

「たぶんだけど、このままいくなら明日の午前で終わると思う」

「何でそう思うの?」

「お金のある人でも、毒入りもあるとはいえ、市販の物も入れた食事代とシャワーの水代を続けて注ぎ込む事はしないかなと思って。よっぽど奇特な人でない限りは。でも、そんな奇特な人ならもう少し時間をかけられる罠や流れにするだろうし」

「確かに時間をかけたくないような節はあるわね。最初の方でもいきなり10人減らそうとしてたし」

「建物も新しいし用意されたシャンプーとかも最近出た物もあったから、前々から考えられていた事でもなさそうだしね。それにしても、殺し合いさせたいような14歳の女子にこんなにお金かけるものなのかな。どう思う、ブライアン?」

「うん、それがわかんないんだよね。普通はお金かけないようにすると思う、殺し合いなんて事させるなら。それなのに新築とか新しい物、夕食のレトルトも市販には無い物があるって事は、相当潔癖だからこそだとは思うんだけど…どうでもいい相手だけなら潔癖症の人でもここまではやらない可能性のが高いから、たぶん捜したい人がいるって考えた方が自然ではあるんだけどなあ…」

「捜したい人…ね…」

「…ねえ、それ、もしかしたら、」

 スミスが手元のノート内のブライアンに関する欄に目を落とし、ガルシアがブライアンへ問いかけかけた時。遠くの部屋から悲鳴と鈍い物音が立て続けに鳴るのが聴こえた。