【 AIRAM 〜アイ・ラム〜 】(第一部小説執筆中)

オリジナル小説【AIRAM】。「アルファポリス」で執筆中公開中のものをこちらでも。追加入力&修正中ですがよろしければアルファポリスでもお気に入り等よろしくお願いします。

第一部「密室1日目」(対象…14歳のマリア名の少女、40名)〜『三室目』

三室目。

 

 

 

「じゃ、あとよろしくね、」

 スクリーンパネルとパソコンとiPad画面の光だけの暗い室内で、黒スーツの若者の隣の男性が席を立った。黒スーツの若い男性が「お疲れ様ッス、」と会釈しサイドテーブル上のアルミボトルのコーヒーに手を伸ばす。パソコン画面の会話枠内に映る白スーツ男性が一切れのクリスマスケーキをそのままにブラックコーヒーを口にした。

『あ~本当RANちゃんてば可愛いなあ~さっきの見た? 君観てたよね? 凄え可愛いと思わない?』

「あーはいはい俺仕事集中しなきゃなんで」

『えっていうか君いつまでシフト入ってんのもしかして俺達のアイドルのRANちゃん目当てでシフト入れたわけじゃないよね? 狡くない? 狡くない?』

「俺は先輩より先輩の方々に任されてここにいるだけッスよ、つか4番目の先輩休憩時間以外ずっといません?」

『大丈夫これ始まる前に多めに休憩入ったしこの後のシャワータイムで全部見れなくなる時にもう一回休憩入るから大丈夫』

「怖えファン通り越してストーカーじゃないスか」

「マジそれね~また4番目ストーカーやってんのね」

「お疲れ様ッス6番目の先輩」

「お疲れ~、何なのそんなに観たいならこっちのシフト入ればいいのに」

『自分だって入りたかったんですよでもクリスマス近いし年末年始に向けて大口案件が凄え押し寄せててあ~俺のRANちゃんマジ可愛い~』

「ストーカー」

「変態」

『うっせえな6番目俺の描いた絵画もう見せねえぞ』

「そう言って全員に見せびらかすんですよね」

「それな。しかもRANちゃんで半分占めてるとか」

『あれだから…お前らに見せてないやつ入れたら三分の二占めてるから…』

「怖え」

「マジ変態過ぎるだろ」

『シャワータイム観れるならRANちゃんのだけ観て永久保存してる』

「やめろロリコン

「ホントそれな。あ、ここ追加項目~」

『いや俺ロリコンじゃないだってRANちゃんと年齢差三歳だからちょっとロリコンなだけだから。ていうか女性陣の誰かと知り合いの人いない? いたら裏で映像、』

「ちょっと4番目の先輩の通信だけ切っていいッスか?」

「永久に切っていいぞ」

「ウィ~ス」

『あーちょっと止めてごめん冗談冗談だからああ』

 

 

 

 暗く長い階段を登りきった14歳のマリア達が、階段ホールを抜けた先、突き当りが白い照明で照らされる一本の暗い通路へ出る。肩で息をする少女達の後ろで階段ホールへの道が分厚い壁で閉じられそうになる。閉じ込められそうだった一人の少女の手をブライアンが握り、通路側へと引いた反動で少女を膝上に抱え通路の床に尻もちをついた。

 明るい白光で照らされる窓が三面にある突き当りへ真っ直ぐに向かう通路内に閉じ込められた少女達が、その場に腰を下ろし壁に手をつけ呼吸を整え、呼吸の荒くない少女は明るい窓側に寄り窓の外にある場所へ向け高い声をあげる。

「うげえ何これ超高くない?」「つか地下二階からどれくらい上がったんだろ地上すぐに出してくれてもいいじゃんむしろ外」「えってか何か下に針山?」「あれ血じゃないてか死体まである感じ?」「視力良い人こっち来て見てくんないあれ死体? 本物?」

 窓側で外の光景に声が大きくなっていく少女達の声を、「何してくれたのよ!」と震える声が閉じられた扉前から響き一瞬で鎮めた。ブライアンの前で床に座りこみ涙をこぼすソバカスの少女が、口を震わせ俯き床に倒れ込むように蹲った。

「あんたが私の手を引かなきゃ、私階段の所で一人だけ残って殺し合いから免れられたのに、」

 泣き声と嗚咽を震える口から出す彼女の肩に触れたウィルソンが、その肩をさすり声をかける。

「あんたが階段に残っても生き残れたかはわからないけどね」

「わかんないでしょ…! 私なんか銃使った事ないし運動神経も良くないし、頭だってそんな、」

「さっき通路に閉じ込められた女さあ、足音も無かったのに、私とブラウンが声かけた時には気配も反応も無かったんだよ。あんなに大声で泣いてた女が声かけた時に衣擦れの音も反応も無いなんて、おかしいと思わん?」

「あーそれ。ウィルソンとも話したけど、泣き声聴こえた時に衣擦れとか足ダンする音とかもあっち側の通路に響いて聴こえてたから、反応あったら絶対わかるはずなのに何もないんだもんねえ」

「うっ、嘘ぉ…!」

「ホントホント。まだ先に進んでないからわかんないけどさ。仮にまだ生きてるにしても、無事でいられるかはわかんないじゃん?」

「だからたぶん通路進んで生き残る方が生き残れる可能性はあるんだよなあ。場合によっては4人以上でもいいとか白仮面言ってたし」

「まあでも人数減らないと先へは進めないみたいだけどね~。そうなるとウィルソンとブラウンが言ってる事が合ってる保証もないけど~」

「…ミラー、ウィルソンとブラウンが言ってる事、当たってるかもしれないわ。窓の外、見て」

「何、死体でもあんのスミスちゃん?」

「あれ、もしかしたらさっき言ってた通路に残ってた子じゃない?」

「え?!」「わっちょっとガルシア、」

 三面の内の真ん中の窓の外の前方に、下から長く太い柄を突き出したテーブル型の直径二メートル大程の白床が見える。その先には、真っ暗な通路が白壁の中に穴を空け。真っ暗な通路内で、白仮面二人に挟まれた長い黒髪の中国系の風貌の少女が、低い丈の白ワゴン内に体育座りで座らされ、両手首に手錠をかけられている。

「マリー…!」

「えっ何知り合いなのガルシアちゃん?」

「同じクラスだった事があって、その、知り合いっていうか…」

「へえ…」

「ていうかアイツがマリーだったらアンタの呼び名は何だよ巻き髪」

「私はガルシアって名字からアリシアとか呼ばれてたけど、アリシアって名前の子が他にいるから凄く面倒臭かったんだよなあ…そのくせ自分の事は名字がリーだからマリーって呼んでとか言いやがって、」

「何だ巻き髪こっち側かよ歓迎するぜ!」

「うわっちょっと話せよデカパイ、」

「お前までデカパイ言うなし! これ胸から誇り二つぶら下げてんだからな!」

「ぶら下げてるとかいうなよデカパイ」

「うるせえミラーその絶壁揉んで仲間入りさせてやる!」

「あいにく着痩せする方なんで隠してます~」

「隠してんなら見せろよ胸元まで服破って胸の谷間皆に拝ませてやるから」

「ちょっとやめなよ二人共~!」

「あの二人は置いといて、あそこにいるのがマリー…リーだって事は、生きて残ってたら殺し合いに参加しなくていいって事…?」

「いや、白仮面二人に囲まれて手錠されてるあの状況は無事では済まないだろ」

 毛先をワックスであちこちにはねさせた黒いショートヘアの背の高い黒人の少女の発言に、少女達が口々に「あ、黒人のマリア」と呟く。黒人の少女が舌打ちをして「ルイスだ」と名乗り、呟いた少女達を睨んだ。ピンクと青のラインが入ったホワイトブランドの少女が「そうだよねえ」と相槌を打つ。

「あそこから見せつけに落とされる可能性もあるよね。ね~ブライアンちゃん」

「ああ、今度から残ったらこうなるぞって見せつけでね。ていうか通路の下の文字フランス語だよね…」

「フランス語? あ、本当だ。ドイツ語ならなあ…」

「まあでもしそうだよね~白仮面だし」

「そういや医者の娘のスミスちゃんは眼鏡かけてる時の視力いくつ?」

「普通に一.〇よ。何で聞くの、ミラー?」

「針山の中の死体が本物か判別してほしいんだけど…この距離じゃ二.〇ないとわかんなさそうかなあ…」

「視力二.〇の人いる?」

「えっ、私二.〇だけど死体とかマジ無理!」

「ちょっとだけ見てくんない?」

「やだやだやだやだ絶対無理ちょっと待って皆前に押し出さないでていうか走るの良くても高い所無理なんだけど二重で無理ギャー! ってか死体ぃぃギャー!」

「うるせえとっとと本物か教えろよお前名前は?」

「ウィリアムだけど待ってマジ無理ああああ銃背中に押しつけてる?! 押しつけてるよねわかった見るから見るから…ゔっ、何か頭から血流して体の向きがおかしいヤバい無理無理無理無理!」

「彼女の説明だけ聞いてると死んでておかしくないと思うわ」

「スミスちゃんいわく死体の可能性大だってさはいウィリアム解放~」

「ゔぉえっ、あっ…ヤバイ吐く無理、」

「ちょっと吐くなら階段側にしてヤバイから~!」「そうだよただでさえ暗くて狭いんだから~」

「ウィリアムは放っておくとして、ウィリアムの見た光景をスミスちゃんが聞く限りでは死体は本物っぽくて、IQ少女のブライアンいわくリーとかいうモンゴロイドの女は見せつけに落とされて殺される可能性大っていう事だね」

「ねえウィルソン私最初にそれ言ったよね私ジョンソンです平行棒で国内優勝しましたけどねえ!」

「ねえスピーカー何か機械音鳴ってない?」

「ねえ何で無視すんのおいブラウンまで」

『残っている25人の少女達、いえ、その通路の少女達には24人と言う方が正しいですね、24人の少女達。これからあの少女がする事を見てから、次に出る1人を決めてください。それによって、貴女がたがどれくらいの人数が残るかが決まります』

「えっ何25ってあの黄色人種入れて25?」

『貴女がたにはA、B…アルファベットの選択肢しかありません。どの選択肢を選ぶかによって、貴女がたの生存率が決まります』

「えっ何どゆ事?」「もう何言われてもその反応しかできないよね! 何なのマジ!」

『それでは選択肢を最初に選ぶ権利を、あのマリア・リーに差し上げます』

「おっアイツが何選んだかでわかるな二つしかないんだから」「やりいでもアイツ選んだのより残ってる方が生存率低かったらどうする?」「あーそれ。つかあっちの白仮面がリーにマイク向けてるけど」「つかアイツ生き残ったら合流するって事?」「でも噛ませ犬役だよね~この先も残ったやつ噛ませ犬にされるんじゃねマジ怖~」

『さあ、マリア・リー。貴女が選ぶのは?』

『B!』『Bの通路が開きます』

「えっ何、通路?」「うわっ、何か上から下がってきた」「あのボールに捕まって先へ進めって事?」「つか窓の外に若干だけどスペースあんね。真ん中の床と同じくらい。渡りきったらここに来れるって事かな」「あー窓の下にEXITの文字あんじゃんさっきの扉全部にあったよこれ」「割と通りやすそうだけどアイツ運動神経悪そうだよな~」「つかあの長さの髪だとぜってえどこかに引っかかるんじゃね?」「マジそれ」「あ、ボールに向かって飛んだぞ」「うわ滑って落ちた」「あー、真ん中の床の柱で見えねえけど落ちたなありゃ」「うわっ何か落ちた音したべしゃって液体の音までしたぞ」「やべええ…」「って事は運動神経良い奴じゃないとあれ渡れねえな~」

「どうする、ウィルソン?」

「私運動神経は悪くねえから大丈夫だと思うけどあのボール滑りそうだし高いからな~。Aの選択肢次第だな。ブラウンはどうよ?」

「アスレチックだったら得意! 猿って言われてた事あったし」

「猿ブラウンか…茶色だしちょうどいいか…」

「ちょっとあだ名考えないで!」

「あの距離なんだったら私はちょっと厳しいかしら…幅跳びは悪くないんだけど。ブライアンはどう?」

「たぶん大丈夫だと思うけど、A次第かなあ。安全圏で進みたい」

「ミラーとジョンソンは大丈夫そうよね」

「私はもち大丈夫!」

「私も大丈夫かな~。何だったらこのミラー、スミスちゃんが落ちないように支えてみせますとも」

「二人分の重量で落ちないかはまだわからないわよ」

『それでは皆さんに次の選択肢を聞きます。どの選択肢か、壁に埋まっている選択肢ボタンを押してください』

「えっちょっとA~Dまであるんだけど」「何で? AとBだけじゃないの?」「えーつかこれあれじゃない引っ掛けじゃない?」「じゃAでいいじゃん」「私もA押そ」「私も」「あたしも~」「Aで」

『多数決の結果。A14、B2、C3、D5』

「ちょっオイ何でB押したやつ二人もいるんだバカかよ!」

「いや何か実は二回目押したら違う通路がとかありそうかなーとか~」「ごめんウィルソンちゃん怒んないでよ~」

「はあ? 何で自己紹介もしてない女にちゃん付けで呼ばれなきゃなんねえんだよ」

「ちょっとウィルソン落ち着いて~」

「そうだよあの中に銃持ってる子いるかもじゃん落ち着こうよデカパイ~」

「デカパイ言うなミラーその服剥ぐぞ」

『多数決の結果、Aの通路を解除します』

「ねえスミス、ドイツ語できるんだよね?」

「え? 何、ブライアンいきなり、」

「あの天井からボールぶら下げてる太いワイヤーの出てる辺りの文字、読める?」

『解除したAの通路を通りたい人を1人だけ出します。通る人は通路横に開いたボックスの中に入ってください』

「なああれどうやって使うの…」「マジ新体操とかじゃないと通れない系~」「絶対Bのが通れるじゃん」「1人通ったらもう皆B行こうよその方が生き残れる確率高いよ」「賛成」「ていうかCとDは?」「てかあれ渡れる人とか絶対いないじゃん」「途中までの平均台までならいいけど真ん中の横になってる棒がね~」

「私、行っていい?」「ジョンソン」

「ああ、そういえば新体操だっけ。あれの競技であんなのあったね」

「新体操じゃなくて体操ねブラウン。平行棒なら得意」

「伊達に国内優勝してないもんね。いってら~」

「皆、私で異論ないよね? じゃ、皆、お先に行ってま~す」

『マリア・ジョンソンで構いませんね? ボックスの扉を閉めます』

「ねえ、中国語できる人いる?」

「どしたのブライアン」「中国語?」

「私、できるよ。ハーフだから」

「あの壁下の…針山の辺りの壁にある中国語、読める?」

 

 

 

 ~ 残り人数、…24。 ~